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第1特集
食の安全より集票が大事!? 「食と政治」の打算的な関係【3】

農家からのアンチの声 TPPだけじゃない!農協が抱える深刻な病巣

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――前特集までは、政治と食の打算的な関係を見てきた。その中でも一大利権となっており、大きな力を発揮している農協の実情について、実際に農協と契約している生産者や、民間の農産物卸売会社からの訴えを中心に見ていきたい。

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『農協の陰謀』(宝島社)

「農協を通して賠償をすると有利になるんです……」

 群馬県伊勢崎市内で野菜の卸売を行っている東群青果代表取締役社長の小林章宏氏は、あきらめの入り混じった表情で、そう訴えた。東日本大震災による福島第一原発の事故で、伊勢崎市から出荷されたほうれん草から基準値を超える放射性物質が検出され、出荷自粛措置が取られたのは2011年3月のこと。この出荷停止期間中の営業補償として、各農家では東京電力に対して損害賠償を請求した。小林氏の証言によれば、この賠償をめぐって、民間卸売と契約する農家と、農協と契約する農家では、東京電力の補償額が異なったというのだ。

「うちでは『仕切書』と呼ばれる各生産者さんに出す支払い明細書を東電に提出し、過去3年間の出荷実績を明らかにして賠償を請求しました。しかし、農協(市町村)を通じて賠償請求を行った農家には、自己申告で記しただけの野菜の作付面積を提出して、多額の賠償金を得た人もいるそうです」

 3月といえば、冬に出荷のピークを迎える伊勢崎地域のほうれん草はほとんど畑に残っておらず、作付した半数以上はすでに店舗に並んでいたはずだが……。

「農協と契約している農家では、すでに出荷されていた大部分のほうれん草の金額までも賠償金額に算入し、本来支払われるべき賠償金額の7~8倍を手にした人もいたようです。『こんなに補償金をもらえるなら、また原発が爆発すればいいのに』なんて、冗談にもならないことを口にする農家すらいる始末です」

 東京電力の資料によれば、賠償請求にあたっては、出荷制限による損害金額の証明として野菜の出荷数を記した「出荷台帳」や「出荷伝票」、あるいは「販売計画書」などの提出を求めている。同社に確認したところ「個人農家からの請求でも、農協を通しての請求でも、提出していただく書類や算定基準に違いはありません」と、両者の意見は食い違う。また、この地域を担当するJA佐波伊勢崎にも問い合わせてみたものの、回答は得られなかった。

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