(写真/川内章弘(CUBISM.INC))
『菊とギロチン』『わたし達はおとな』『福田村事件』『熱のあとに』など、数々の話題作に出演し、着実にキャリアを積んできた俳優・木竜麻生。 今秋、その勢いは加速し、9月にスタートしたNHK夜ドラ『いつか、無重力の宙で』では、森田望智、片山友希、伊藤万理華とともに主演を務め、10月には『見はらし世代』『秒速5センチメートル』と2本の映画の公開を控えている。 今年俳優生活11年目を迎えた彼女の、最新出演作からみる役へのアプローチや、俳優としての思いなど、〝現在地〟を探る。
──映画『秒速5センチメートル』(10月10日公開)は公開前から大きな話題を呼んでいますが、原作となる新海誠監督のアニメはご覧になっていましたか?
木竜麻生(以下、木竜) もちろん拝見していました。新海監督の作品はファンが多いですが、その中でも『秒速5センチメートル』に思い入れを持っている方が多い印象がありました。新海監督ご自身もインタビューで思い入れが強い作品とおっしゃっていたのを読んで、実写化することにも、その作品にお声がけいただいたことにも驚きました。
──アニメで人気のある作品に出演するプレッシャーはありましたか?
木竜 正直、最初は大丈夫かなという不安がありました。でも、作品に入る前に奥山由之監督、脚本の鈴木史子さんとお話しする時間をいただいて、いろいろなお話をさせていただく中で、お二人がたくさん考えて、誠実に作品に向き合う中で、私にお声がけをしていただいたことが伝わってきました。「私でよければ全力で頑張らせていただきます!」と思えたので、作品に入るまでには不安もなくなって、むしろ楽しみにして迎えられました。
──どういう理由でキャスティングされたかは聞きましたか?
木竜 お二人が私の主演映画『わたし達はおとな』(22年)を観てくださっていて、キャスティングについて話しているときに、「あの映画の木竜さん良かったよね」という話になって、水野理紗に合うんじゃないかということで声をかけてくださったそうです。以前から私の出演作を観ていただいていたのもうれしかったです。
──現場に入ってから、アニメを意識することはありましたか?
木竜 意外となかったですね。奥山監督が作品に愛情を持っているのを感じていたので、奥山監督とたくさんお話をしながら作っていくことのほうが大切だと思ったんです。ただ、新海監督の書いた小説を読み返させていただいて、アニメーションでは描かれていない遠野さんから見た水野理紗を、役作りをする際に内側で参考にさせていただきました。
(写真/川内章弘(CUBISM.INC))
──水野理紗というキャラクターをどのように捉えましたか?
木竜 松村北斗さんが演じる社会人時代の遠野さんを浮き上がらせるときに、理紗は重要で。遠野さんにとっての理紗は面倒くさくなくて、ある範囲から踏み込まない。「ここからは入っちゃいけない領域なんだ」ということを、無自覚なのか意識的にかは分からないけれど察知できる、ちゃんとそれを回避できる人だなと思ったので、そこは意識しました。ただ、それでも彼女の中で違和感や思っていることがあるので、それを出し過ぎず、でも見えなさ過ぎないように、塩梅を考えながら表現しました。
──理紗は会社で同僚と話すときと、家で遠野と話すときでは、表情や喋り方が違いますよね。
木竜 最初に理紗が出てきて初めて言葉を発するのが、同僚との会話だったので、決してきつくは見えないけど、「悪い人じゃないけど、あの人はそういうタイプだから」というような人に見えるようにしました。突き放しているわけではないけど、うっすらと「ここがラインですよ」という壁を作っているんですよね。そこは視線や受け答え、声の温度感などを繊細に意識しました。
──遠野とのシーンでは、どんなことを意識したのでしょうか?