――怪物のような情熱と献身的な使命感がその手を突き動かす。帽子職人・デザイナーとして異郷で命を賭し続ける男が“目覚めた”瞬間とは
(写真/三浦太輔)
数々のトップメゾンがパリコレで使う帽子を手がけてきた日爪ノブキ。その腕前を目前で堪能できる場所がある。ラ ギャラリー ディオール。パリのディオール本店近くにある美術館では来場者の目前で帽子を制作することもあるそうだ。
「世界に視線を向けたトップメゾンは職人の客に手作業を見せることで尊重していることを示しているんです。日本との大きな違いの一つでもありますね」
国内の服飾業界は効率化のための工業化が著しい。逆に言えば職人的な手作業をどんどん排除していっていると言える。
「帽子で一番コストも時間もかかるのが型作りなんです。儲けだけを考えたら少ない型で同じものを大量に作っていくことが一番です。けど、それは妥協であり工夫じゃない。僕は職人でありデザイナーでもあるので工程やデザインを工夫することで、そこを解決することもできます。工夫ができなかったら先細りしかないですからね。一緒に仕事をしている欧州のブランドは、デザインや職人に敬意を払うことが世界で戦うために必要なことと理解しているんだと思います」