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写真時評~モンタージュ 現在×過去~

戦死者たちの肖像(中)

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「神田郵便局戦役記念絵葉書発売光景」(交通学館/絵葉書/1904年)

 日清戦争開戦の年に当たる1894年に博文館から刊行された「日清戦争実記」(128ページ)は、網目銅版印刷の口絵ページが人気を博し、ナショナリズムの高揚も相まって爆発的な売り上げを記録した。口絵には、戦地で活躍した軍人や戦死者たちの肖像写真がたびたび掲載され、出征軍人の顕彰という役割も果たした。日本軍の勝利に沸く国民だけでなく、戦死者の遺族や出征者の安否を知ろうとする家族たちが購買層となって、この雑誌の人気を支えていた。この時期、日本各地の写真館は、晴れの出征を祝おうと記念写真を撮る出征者たちの姿であふれ返ったという。それまで肖像を残すのは、一部の階級の特権であったが、写真技術の向上によってその裾野が徐々に広がりつつあった。

 日本の新聞に初めて写真が掲載されたのは、1890年7月1日付の「毎日新聞」に小川一真の製版により、帝国議会議員の肖像写真が本紙とは別に付録として付けられたものだとされている。また、輪転機で写真が新聞本紙に印刷された最初の事例は、1904年の正月に「報知新聞」に掲載された女性や少女の肖像写真であった。

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