サイゾーpremium  > 連載  > CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評  > 芥川賞ダブル受賞作から問い直す メディア...

新人小説家に与えられる文学賞の最高峰である芥川賞。今年上期の第144回では、まったく異なるタイプの書き手がダブル受賞を果たした。私小説という懐古趣味的ジャンルと、表現に挑戦する新しい実験小説──その解釈の正当性に疑問を提示する。

1104_kitokowa.jpg
朝吹真理子氏の『きことわ』

去る1月17日、第144回芥川賞が朝吹真理子と西村賢太に与えられることに決まった。

 受賞した両名は、実験小説の朝吹と私小説の西村と対比して語られる。年若い朝吹の小説が新しさを、初めて芥川賞候補に取り上げられてから受賞まで5年もかかった西村が懐古趣味的なものを代表しているかのように。

 しかし、実際は逆である。ある意味では西村の小説は現代的であり、朝吹の小説は新しくないのだ。

 朝吹の小説はヌーヴォ・ロマンからの影響がうかがえると評される。受賞作『きことわ』は、歳月が過ぎ去ることの早さを読者に抱かせるためにヌーヴォ・ロマンの手法が使われているのだが、ヌーヴォ・ロマンは今から50年前の文学運動である。主要な作家も大方が死んでしまった。つまり、いささか古いのである。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年8月号

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 小栗有以(AKB48・アイドル)──多忙な日々の中で心と身体の調和を保つ秘訣とは
    • 水道橋博士(お笑い芸人)──「うつ病」発症は国会の重責が原因ではなかった?
    • 3li¥en(アーティスト)──キャリアは浅くとも人間味がディープすぎるフライガール

連載

    • 【マルサの女】つんこ
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【最終回】【AmamiyaMaako】スタジオはいります
    • 【Yoru】艶やかに躍動する 気韻生動の肉体美
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【アンジェラ芽衣×梅本剛史】身長172センチの女性モデルが “あえて”ツナギを着てみた!
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ