サイゾーpremium

Home

野性爆弾、鳥居みゆきも目じゃない! テレビに絶対出られないカルト芸人は面白いのか?

2011年5月18日 08:00

 お笑いブーム以後、これまでならテレビでは見られなかったカルト芸人も数多くメディアに進出している。だが、本当にディープで危険な笑いは、いまだテレビで目にすることはできない。カルト芸人の歴史を紐解きつつ、その存在意義を探ってみた──。

1106_warainoseisen.jpg
今年1月末に発売されたカルト芸人をアー
カイブ化した「笑いの聖戦」(スコラムック)。
カルト芸人53組のネタが見られるDVD付き。
今回の特集でも参考にさせてもらいました!

 今年1月、人気番組『アメトーーク!』(テレビ朝日)の企画プレゼン大会で、"鳥居みゆき"が「地下芸人」を発表した。鳥居が番組に呼びたい芸人として名前を挙げたのは、"GO!ヒロミ44"、"脳みそ夫"、"汗かきジジイ"など、不穏な響きの芸名ばかり。普段、地上波でその姿を拝むことのない芸人が高視聴率番組の中でその名を轟かせた瞬間だった。

 また、話の流れとは関係ない支離滅裂なボケを挟みこんだネタを繰り広げ、「面白いがテレビ的にはヤバすぎて売れることはない」と認識されていた吉本興業所属の"野性爆弾がテレビでブレイクを果たしたり、アングラ芸人を特集したムック本が発売されるなど、これまでカルト的な扱いを受けてきた芸人がスポットを浴びる機会が増えている。

 地下芸人、アングラ芸人とも呼ばれる「カルト芸人」に正確な定義があるわけではない。あえて挙げるなら、「舞台中心で一般のファンには受け入れがたい芸風」で、「常識に従わない言動が強い中毒性を持つ」という共通項を持つということだろう。

 こうしたカルト芸人は、東京のお笑いライブシーンが活性化し始めた90年前後から姿をあらわしていた。体の一部をカットして水芸に似て非なる「血芸」を披露する"車田ポン"、巻きグソをあしらった攻撃的なコスチュームに身を包んで脛毛に花を活ける"うんこマン"、暴走ギャグがみうらじゅんに絶賛された"げんしじん"など、枚挙にいとまがない。しかし当時は「お笑いライブで評価される→テレビのネタ番組に出演→お茶の間の人気者へ」の交通網がしっかり整備されておらず、お笑いライブにサブカルの瘴気が満ちていた時代だった。

 それが00年代、吉本興業の全国展開やバラエティ番組の陣地拡大に伴い、それまでブームとして語られていたお笑いが本格的なシーンとして定着すると状況は変わっていく。差異を求めるメディアが未知なる芸人を開拓するようになり、"地下"にも寂光が差し込むようになったのである。『エンタの神様』(日本テレビ)では"小梅太夫"、"世界のうめざわ"といったメジャーシーンから縁遠かった芸人を地下から発掘して積極的に採用、テレビ用のネタに当て込み、『あらびき団』(TBS)では"安穂野香"、"しんじ(キュートン)"、など、時代が時代ならテレビのフレームに収まらなかったであろう食材をおいしく調理していった。

 同時に、マニアックな芸を曲げずに冷や飯を食わされていたケンドーコバヤシ(ケンコバは、チャック全開のスーツ姿で痴漢行為を独白するネタなどを繰り広げていた)、前述の野性爆弾、鳥居みゆきなども、メジャー化を遂げていく。

 果たしてそれまで交通が途絶えていたカルトとメジャーに、通行可能な道が開けたのである。

※au IDログイン画面へ遷移します。

close

auスマートパスに戻る