サイゾーpremium

Home

家制度の文化が薄れ、違憲となった法律も? 悪法は司法でどう扱われたのか? 最高裁が違憲判決を下した法律

2017年4月14日 18:00

――日本国における絶対的ルールである憲法。その憲法に反するという違憲判決が最高裁で下された法律は、「悪法と認められた法律」と言うことができるだろう。そこで法律のプロである弁護士2人に、最高裁で違憲判決が下された法律と、その背景について解説してもらった。

1704_2toku02s.jpg
『最高裁の違憲判決~「伝家の宝刀」をなぜ抜かないのか~』(光文社新書) 

 我々庶民の心に“もっとも寄りそってくれる法律のプロ”は弁護士だろう。彼らの目から見て、「悪法」はどのように捉えられているのだろうか? 弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士、志賀勇雄弁護士に話を聞いた。まず山岸氏は「弁護士は『悪法』という言葉はまず使わない。出来不出来、良し悪しはあるにしても、一度、立法府(国会)が制定し、天皇陛下が公布した以上、法律は法律」と説明する。

「ただ、日本国における絶対的ルールである憲法に反する=違憲と判断された法律は、いわゆる“悪法”ということもできます。日本の司法においては、法令について最高裁で違憲判決が出ることは非常に稀なので、その実例についていくつかご説明します」(山岸氏)

 ひとつ目の例として挙がったのは「かつての民法900条4号」だ。

「かつて、この法令の但書には、『嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし』という規定がありました。つまり、愛人などの子どもの場合は、法律婚の夫婦の子どもと比べて相続できる財産が半分になっていたわけです。

 ただ、諸外国で同様の法律の改正が進んだことや、実際に法律婚ではない形で生まれる子どもも増えてきたこともあり、婚外子の相続を減らすのは不平等ではないかという考え方は徐々に広まっていきました。そして平成25年に先述の但書が違憲(憲法14条)と判断され、同年にその部分が削除されました」(志賀氏)

 次の例は、かつての民法733条の「女性は、前婚の解消又は取消しの日から6カ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」というもの。

「この規定の趣旨は、女性が再婚した場合に『生まれた子どもは誰の子なのか』という争いを防ぐことにあります。また、このかつての733条と関連する法律として、『婚姻の成立の日から200日を経過したあとに懐胎して生まれた子ども』を夫の子どもである等と推定する民法772条がある。ただ、民法772条の日数をもとに計算すると、再婚禁止期間は100日としても齟齬が生まれず、6カ月にわたって再婚を禁止するのは、女性の再婚の権利を侵害しているのではないかと以前から言われていました。そしてこの733条の6カ月の規定も違憲判決が出ることになります」(同)

 もうひとつは、1968年に栃木県で当時29歳の女性が、自身に対して近親姦を強いた当時53歳の実父を殺害した、いわゆる「栃木実父殺し事件」という痛ましい事件に関わるもの。その裁判では、かつての刑法200条の「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス」という尊属殺(親等上、父母と同列以上にある血族の殺害)の規定に違憲判決が出ることになる。

「女性は14歳のときから実父による性的虐待を継続的に受けており、親娘の間で何人も子どもを生まされるという、聞くに堪えない状況にありました。その女性の結婚相手が決まったときに、実父が監禁や性行為の強要を行い、女性が思いあまって実父を絞殺してしまった事件なんです。『なんとか執行猶予を付けられないか』という声は当然上がりましたが、執行猶予を付けられる判決は、処断刑が懲役3年以下に限られている。そして法律上では減刑は2回しかできないので、無期懲役の場合は2回減刑しても3年6カ月にしかならないんです。ですが、最終的にはかつての尊属殺規定に違憲判決が出され、女性に執行猶予が付けられることになりました」(山岸氏)

 この3つの違憲判決が下された法令は、いずれも日本の家制度にまつわる考え方がその背景に見える。

「法律を作る背景には、その基礎を形成し、合理性を支える『立法事実』が必要となります。その立法事実は、時と場所、そして地域により変わります。例えばタバコについても、昔は電車の中でも飛行機の中でも吸うことができましたが、それもタバコに関する考え方や、健康への影響の科学的事実の蓄積、また国民の健康を守ろうという意図により、法律が変わろうとしているわけです」(同)

 言い換えれば、大麻の使用についても健康への影響の研究が進み、国民感情も変われば、それが立法事実となり解禁される可能性もある……ということなのだ。

(取材・文/古澤誠一郎)

※au IDログイン画面へ遷移します。

close

auスマートパスに戻る