サイゾーpremium  > 連載  > 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」【第四回】/【向精神薬】をパステルに包む彼女
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五所純子「ドラッグ・フェミニズム」【第四回】

【五所純子/ドラッグ・フェミニズム】すべてを傷痕に変えたくて……ロアは向精神薬をパステルに包む

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14歳のとき、性犯罪事件に巻き込まれ、その被害者として報道されたこともある。(写真/草野庸子)

 ひとつのブログが彼女を虜にした。レースとフリルとリボンにいろどられた妖しい乙女たち。ゴスロリ調で女児が描かれたイラストとともに、メイド服やセーラー服に身を包んだ男の写真もあった。“男の娘”の先駆け、一部の女子たちの人気を集めていた。

「絵がうまいなって。あとメイド服とか高くて買えなかったから、すごく憧れました。掲示板にコメントを書きこんだら、『会おうよ』ってすぐ連絡が来ました。中学3年のときです」

 メイドになりたい女子は、メイド姿の男に認められたかった。まるで被服心理学。ペアルックというより双子コーデ。白い羊の大集団で低まる自尊感情は、黒い羊の少数精鋭に飛び込んで高める。ゴスロリの様式的な猟奇性はSMやリストカットと親和性が高く、温かい受け皿のようだった。しだいにロアの傷痕は、ストレスの発露か、ファッションの装飾か、見分けがつかなくなっていく。

 船橋に住む27歳の男だった。渋谷駅ハチ公前で待ち合わせ、道玄坂のファミレスでパンケーキを奢ってもらった。「にゃんにゃんしようよ」という言い回しがわからないまま頷いた。円山町のラブホテルに向かう道すがら、セックスの意味だと察した。

「初めて好きになった人としたセックスでした。彼を独り占めしたいって気持ちはあったけど、他の女の子とも仲がいいのは掲示板を見てわかってました。彼は女性不信で、目に見えるものでしか愛情がわからないと言ったんです。『目に見えるものって何?』『お金』『そんなの、できない』『やっぱり。お前も他の女と一緒じゃん』。そう言われるとカチンときて」

 男の提示額は20万円。恋人に会うのに資金が必要。子ども相手に恋愛商法。恋愛という大義名分はことごとく搾取を正当化させてしまう。「中学生 バイト」と検索すると「中学生でもできる住み込みバイト」が表示された。全裸の写真を送るように言われ、暴力団関係かといぶかった。待ち合わせに指定された品川駅に行くと、電話で次から次へと場所を移動させられた。最後に辿り着いたのはホテルで、使い走りの男が待っていた。シースルーの衣装でポーズをとらされ、何枚も写真を撮られた。セックスをしている間、男性が感じやすい方法を指南された。演習と試験を兼ねた面接、淡々と終わった。一度だけ、肌が綺麗だと褒められた。

「危ない仕事だと思ったのでやめました。すぐに断るとやばそうだったので、その場では『やります』って言って、家に帰ってから『やっぱりやめます』って連絡しました。どういう仕事が待ってたのか、結局わかりません」

売春してブログの男に貢いだ14歳の女子生徒


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