サイゾーpremium  > 連載  > 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」【第四回】/【向精神薬】をパステルに包む彼女
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五所純子「ドラッグ・フェミニズム」【第四回】

【五所純子/ドラッグ・フェミニズム】すべてを傷痕に変えたくて……ロアは向精神薬をパステルに包む

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中学時代、ストレスを感じるたびに髪色を変えたというロア。取材時の髪は赤かった。(写真/草野庸子)

「私ってツッコミどころ満載なんでしょうね」

 髪を染める大胆不敵な子。そのくせ生徒会に所属する真面目な子。しょっちゅう保健室に行く病弱な子。人はロアの印象を定められずに恐れるのかもしれない。ロアはよく髪色を変えた。自由自在な変化は上級生の目に生意気に映り、廊下で「死ねよ」と囁かれた。今でも見知らぬ人に「なんだ、おまえ」と正体を問われる。「おっとり、マイペース」と通知表に書かれるロアは、気づけば複雑な立場に追いやられている。わからないものは恐いから早く手中におさめたい。だから、先を急いで誤解する、相手を小さくして叩く、力まかせにねじ伏せる。

「復讐はしません。『人に嫌なことをしたら自分に返ってくる』と母がよく言ってて、それが呪文になってます。というか、私はぼうっとしてて、やり返せないんです。3年前に検査して、後天的な発達障害だとわかりました。それと、IQが54しかなくて、知的障害の4度【註:障害の程度は4区分あり、1度が最重度、4度が軽度を意味する】に認定されたんです」

 反撃を封じる悪しき呪文が母の口癖なら、病名とIQ値と障害度数は困難を解き明かす良き呪文になった。彼女は54という数字を大切そうに口にする。

 初めて精神科を受診したのは14歳、スクールカウンセラーから勧められた。医師は患者が成人するまで病名をつけない方針だったため、IBS(過敏性腸症候群)、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が指摘されるにとどまった。処方されたのはドグマチールという定型抗精神病薬。自分はうつ病だったとロアは考えている。

 副作用の吐気と眠気に襲われ、学校を休んだ。ずる休みだと噂が立ち、無理して学校へ行くと過呼吸を起こし、悪循環に陥った。「腕を切りたくなったら寝なさい」と医師から言われた。

 友達はチャットやmixiに見つけた。「はじめまして」「どこに住んでるんですか」「何歳ですか」、他愛ない質問から共通点を探る。「最近、太っちゃった。薬の副作用がつらくて」「何飲んでるの。私も飲んでる」。共通語にできるほど向精神薬が普及した時代の子どもたち。チャットで知り合った女子の話からリストカットに興味をもつ。mixiのリストカットのコミュニティに流れる。「また切った」「どうしたの」、悩みを相談しあう。

 この時期、ロアはmixiで出会った男性とセックスをくりかえしていた。

「誰でもよかったんです。相手の名前を全然おぼえてないんですよね。これも自傷行為でした。私、人の家に行くのがすごい好きで、自分の家に帰りたくなくて、セックスしまくってれば薬が増えることがなかったので」

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