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第1特集
20年以上の歴史を誇る「美少女たちの登竜門」の変遷

求めるものはゴクミ? 上戸彩? 国民的美少女コンテストの前途【1】

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 時代はおニャン子クラブ解散直前。フツーの女子高生がクラブ活動感覚でテレビに出る"親近感"を前面に出したタレントの売り出し戦略に陰りが出始めた頃のことである。

 オスカーの取締役宣伝本部長の今井一郎氏は、コンテスト開催の理由を次のように振り返る。

「身近な存在のタレントもいいけれど、芸能界として後藤久美子のような正統派美少女も継承していくべきなんじゃないかと思ったんです」

 だが、問題は何をもって"正統派美少女"とするのかだ。オスカーでは「美少女の5つの条件」を「1、圧倒的な輝きを放つ美しい容姿。2、豊かな知性と品位。3、秘められた神秘性」……などと定義しているが、いずれも抽象的でイメージしにくい。

「審査員の審査項目には、音楽歌唱力、演技力、キャラクター、ビジュアルなどの項目があります。プロポーションは10代前半の子たちなので将来伸びる可能性もあり微妙なところですが、全体的なバランスをチェックします。審査員がつけた点数を集計し、総合得点トップの子がグランプリ。どこか大きく欠けたり、意見が分かれる場合は協議して決めます。マルチメディア賞はネットでの得票数で決められ、モデルや演技、音楽、グラビアといった部門賞は各部門の得点トップの子に決まります」(今井氏)

 今年8月に開催された第12回の審査委員長は写真家の篠山紀信氏。ほかにレコード会社や映画会社、放送局の幹部や、その年々で映画監督やデザイナーなどが加わり、だいたい15~20名で審査される。公正な審査を経て選ばれた歴代受賞者の顔ぶれを見ると、確かにみんな美少女だが、次第に系統が変わってきている気もする。

 やはり、同じ"美少女"というくくりでも、時代の流れや売り出し方針によって「今年はこういう子を選ぼう」といった戦略や傾向があるのではないだろうか。

「それはある程度ありますね。たとえば今年は、『キャラクターのある子を選ぼう』と募集をかける段階から決めていました。グランプリの工藤綾乃は、そこにピタリとはまった。彼女はまったく物怖じすることなく、どこでも自分を表現できる」(同)

 雑誌「Kindai」(近代映画社)や「duet」(集英社)などの編集に30年近く携わり、本コンテストも第1回から取材をしている芸能記者・水上也寸志氏は次のように述べる。

「このコンテストは、イメージキャラクターの後藤久美子という存在があってスタートしたので、私たちもどこかでそれを意識していました。特に第1回の藤谷美紀から、第7回(97年)の須藤温子までの受賞者には、ゴクミが確立した"美少女"という言葉が重荷になっていたのではないかと思います。十代の少女時代は、才能や力量があったのは間違いないのですが、細川直美(第2回)や小田茜(第4回)、佐藤藍子(第6回)らが、自分自身の個性でその立場を築いたのは、美少女という枠から抜けて、20歳前後から女優として活躍しだしてからでしょう」

 言ってみれば第1~7回までは"第2のゴクミを探せコンテスト"。「21世紀の石原裕次郎を探せ!」コンテストで優勝した徳重聡が、どんなにがんばっても「裕次郎」という偉大すぎる冠に見合う評価がもらえないように、「国民的美少女」たちも、それを見る側もゴクミという呪縛からは逃れられなかったのかもしれない。そんな流れを変えたのは、第7回で審査員特別賞を受賞した上戸彩であると、水上氏は言う。

「おそらくこのコンテスト出身者で、純然たる"アイドル"となったのは上戸さんだけでしょう。実際、ここ数年のコンテストを見ていると、『上戸さんのファンで応募しました』という子がとても多い。彼女が出てくるまでは、『ゴクミのファンでした』という子が多かった。それ以前にもそれぞれ部門賞はありましたが、話題となるのはグランプリだけでした。ところが、審査員特別賞から上戸さんのようなアイドルが出てきたので、翌第8回(02年)以降、マスコミの取り上げ方も変わりました。"うちはグラビア部門賞の子を誌面に出したい""うちはモデル部門の子"といったように、受け皿となるメディア側のキャパが広がってきたんです。事務所としてはまずグランプリの子に歌、ドラマ、あらゆるジャンルでトップに……という思いがあったのかもしれませんが、ちょうど視聴者や読者の嗜好も細分化されてきた時代になりました。なんでもできて、万人から愛される美少女タレントというのが、存在しづらい時代になったんです。国民的美少女コンテストは、上戸さんの登場をきっかけに、"美少女"という言葉にとらわれなくなったように思います」(水上氏)

 確かに上戸だけでなく、最近は、米倉涼子(第6回審査員特別賞)、福田沙紀(第10回演技部門受賞者)、忽那汐里(第11回審査員特別賞)などグランプリ以外の子のほうが活躍しているケースも多い。前出の今井氏は、次のように説明する。

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「言ってみれば『審査員特別賞』は準グランプリのようなもので、伸びしろの大きい子を選んでいます。たとえば、上戸はすごい才能を持っていると感じてましたが、まだ子どもで未知数の部分も多かった。それでも強く推す審査員がいて、将来の成長に賭ける形で授与しました。福田は演技力は抜群でしたが、グランプリにするには見極めが難しかったので、部門賞どまりだった。力はあったけど、本番では硬かったんです。それでもコンテストを見た『3年B組金八先生』(TBS)の関係者から、すぐに出演依頼がありました。そのようにすぐに仕事が決まる子もいますが、基本的には2年くらい先、16~17歳を見越して審査しています。5年またはそれ以上、本格的なデビューに時間がかかる子もいます」

 当然、グランプリを取ったからといってすぐにスターになれるわけではない。グランプリという冠の影響力も、一時に比べれば、弱まっている感も否めない。

 この点は、オスカー側も理解しているようで、「視聴者の好みが多様化しているので、冠だけで勝負できる時代ではないのは確かです」(今井氏)という。そのため、最近のグランプリ受賞者についても、阪田瑞穂(第8回)は舞台、渋谷飛鳥(同)はドラマ、河北麻友子(第9回)はファッション誌などと、一見地味ながら、各自の特性に合わせた活躍の場を用意し、じっくりと育てるという戦略を取っているようだ。

「芸能界の構造自体が変わったんです。万人受けする美少女タレントが求められなくなる一方で、最近は、舞台やファッション誌出身で、20代半ばくらいから活躍しだすタレントさんも増えていますからね。逆にいえば、育ててみないとわからないという状況。国民的美少女コンテストが第7回以降、毎回6~9人もの受賞者を選んでいるのも、"数を撃たなきゃ当たらない"というプロダクション側の心理が働いているんだと思いますよ」(芸能記者)

圧倒的な告知力と築き続けたブランド力

 芸能界の中で、その影響力や役割が徐々に変化しつつも、20年以上続く国民的美少女コンテスト。応募総数は平均約10万人と、ホリプロタレントスカウトキャラバン(約3万6000人/08年)をはるかに超える。

 第7回のコンテストの審査員も務め、上戸彩を見いだしたアイドル評論家の中森明夫氏はこう語る。

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Z-1として、地道な時代を過ごしたのち、『3年B組金八先生』などの出演をきっかけにブレイクした上戸彩と、「Cancam」などのファッションモデルを経てブレイクした米倉涼子。

「このコンテストの金のかけ方はすごい。プロモーションに相当金をかけてるから、応募者数も多い。この少子化の時代にあって10万人の応募とは、きれいな娘を持つ目立ちたがりの親は、もれなく応募しているはず。ただ、金をかけて大規模なコンテストを開催したからといって、うまくいくわけではないのが芸能のおもしろいところ。たとえば、エイベックスが全国47都道府県で開催して、11万人から選んだオーディションの結果が、Dreamですよ。『ええっ!?』てなるでしょ」

 そんな中、国民的美少女コンテストが20年以上も続いた秘訣とは? 水上氏はこう見る。

「話題になったコンテストでも、結局続かず、今はなくなってるものが結構ある。ここまで続いていると、『継続しているコンテスト』というだけで大きな価値があります。全国10万人もの少女に変わらず『応募してみたい』と思わせるのは、惹き付けるパワーやブランド力がかなりあるということ。そのため、原石だって集まりやすい。また、コンテスト出身者が先輩後輩と代々つながっていくことで、タレントとしての仕事もつながっていくというメリットもあります」

 ただ、今後も続けるに当たって課題はある。水上氏が続ける。

「受賞者がせっかくデビューしても、ファンと直接触れ合う機会がだんだん少なくなってきたように思います。大きい事務所ですし、テレビ局や広告代理店対策もばっちりなんですが、純然たるファンがなかなかつかめない。一昔前や小さな事務所の戦略と思われるかもしれませんが、もっとファンに目を向けた対策を考えてほしいですね。

 上戸さんも『3年B組金八先生』で注目されるまで実は時間がかかりました。初期はアイドルグループのZ-1のメンバーとしてイベントに出たり、ソロでも一部のアイドル誌の取材を受けたりしてきました。その地道な活動があってこそ、今の成功があるのだと思います。コンテストに応募する少女たちも、ただ美しいタレントよりも、どこか手の届く自分と近いタレントを目標とする傾向があります。今回グランプリを受賞した工藤さんには即戦力としての力を感じるので、早い段階で歌やドラマが決まると思うのですが、直接ファンと接触できる機会があるといいですね」

 美少女は気高く崇高でなければならない。しかし、たまには身近な存在でなければならない。その案配が難しいのである。

 今後の展開として、今井氏はアジア進出を語る。

「北京やソウルで開催するなど、日本を飛び出てやってみたいですね。それと、コンテストの方法論自体を考えていかないとと思っています。インターネット初期に通信会社と組んで、いくつかの会場をつないで地方予選を行ったことがあります。あの頃は動画がスムーズに流れない状況だったのですが、今はそれよりいいシステムになってるので、ネットを使って、効率良く、より多くの子たちを細かく審査するという方法もあると思います」

 多くの芸能プロから嫌われている本誌に、創刊当初から変わらぬ協力をしてくれる(上戸さんも米倉さんも表紙に出てくれている)オスカーには、美少女文化の牽引役として、今後も奮闘していってもらいたいものだ。


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