サイゾーpremium  > 特集  > アダルト  > ピル後進国の実態【1】/堕胎産業が普及を阻む日本の【ピル】事情

――#MeToo運動に端を発した意識改革により、昨今では女性によるピル使用への認知が高まってきている。だが一方で男性側では「ピルを飲んでいるのはヤリマン」といった間違った認識も根強く残っている。こうした無理解の向こう側には、日本での使用をタブー視して、蓋をしておきたい人たちもいるようだ。

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この手の話になるとよく、欧米の例が持ち出されがちだが、ことピルに関しては、東南アジアでも一般販売が進んでいる。写真上がミャンマーで、下がマレーシアのドラッグストアの例。(写真/山本氏提供)

 日本社会には今も、さまざまな“タブー”が存在する。「女性の避妊」、そして女性が自ら避妊を選択するための手段である「ピル」(経口避妊薬)をめぐる議論もそのひとつだ。

 一般的に、ピル(混合ピル)は卵胞ホルモンの「エストロゲン」と黄体ホルモン「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンを配合した薬剤だと定義されている。予期せぬ妊娠を防ぐ避妊だけでなく、「月経痛の軽減」や「子宮内膜症・子宮体ガンの予防」など、女性特有の身体的悩みを改善してくれる効果がある。

 ピルは、配合される卵胞ホルモンの量によって「低用量ピル」「中用量ピル」などに区分される。また、性行為後に避妊を行う「アフターピル」(緊急避妊薬)、生理の日時をコントロールするための「月経移動ピル」などの種類がある。

 米国や欧州、また東南アジア各国など多くの国では、低用量ピルやアフターピルが薬局やスーパーのドラッグストアで市販化されており、女性が手軽に入手できる環境が整っている。種類も豊富で、かつ価格も安い。各国の所得差や物価差を念頭に置いたとしても、日本の感覚として数百円程度の負担で入手することができる。一方、日本の場合、認可されているピルの種類が少ない上に値段も高く、医者の処方が必須となっている。仮にピルを服用しようとすると、女性は決して少なくない時間的・経済的負担を強いられることになる。

 例えば、日本で認可されているアフターピル「ノルレボ錠」は1錠1万5000円前後。今年3月にジェネリック医薬品である「レボノルゲストレル錠」が発売開始されたが、9000円~6500円程度と高額だ。一方、米国、ドイツ、カナダなどでは、おおよそ1500円から2500円で販売されている。アフターピルを含め避妊はすべて無料(英国)、未成年に無料で提供される(ドイツ、フランス)というようなケースもある。

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