>   >   > 【アメリカ人種差別】の今をえぐる本

――繰り返される白人警官による黒人射殺事件と、それに対するBLMという抗議運動、白人至上主義者とその反対派との激しい衝突……。近年、アメリカでは人種をめぐる差別や対立が噴出しているように見えるが、その構図はかつてより複雑化しているという。この国における人種問題の現状を本を通じて探ってみたい。

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銃社会や人種差別を痛烈に批判したチャイルディッシュ・ガンビーノのMV「This Is America」。今年5月5日に公開され、すでに2.5億回以上再生されている(6月初頭現在)。

 2018年3月、米カリフォルニア州で、丸腰の黒人男性が警察官に20発も発砲され、死亡した。かねてアメリカでは警察官による黒人射殺事件が繰り返し発生し、13年にはそれに抗議する社会運動「Black Lives Matter」(直訳すると「黒人の命も大切だ」、通称BLM)が生まれ、世界的なムーブメントとして拡大している。

 公民権運動の成果である公民権法の施行(1964年)から50年以上がたつが、いまだ人種差別は根強く残る。慶應大学准教授でアフリカ系アメリカ文学が専門の有光道生氏によれば、アメリカの人種問題を考える上でいくつかのキーワードがあるという。ひとつは“マス・インカーセレーション(大量投獄)”であり、この問題を大々的に論じたのが『The New Jim Crow』【1】だ。

「総人口に占める黒人の割合は約13%ですが、刑務所人口では40%を超えています。これは、70年代のニクソン政権以降、政府が『法と秩序を守る』というスローガンを掲げ、有色人種をターゲットにして麻薬犯罪を厳しく取り締まった結果だと指摘しています」(有光氏)

 例えば、80年代半ばに猛威を振るったコカインには、安価で中毒性の高いクラック・コカインと、比較的高価で気晴らしとして使用されるパウダー・コカインの2種類がある。前者はゲットーの黒人の間で大量の中毒患者を生んだが、後者は郊外に住む白人に使われることが多かった。ただ、レーガン政権は「麻薬に対する戦争」と称してクラックのほうを重点的に取り締まった。

「こうした麻薬所持・使用の厳罰化で、80年代に刑務所人口が急増。さらに、ネオリベラリズムの流れで留置所・刑務所も民営化され、“産獄複合体”、いわゆる監獄ビジネスが一大産業に成長。70年代初頭に30万だった囚人人口が、21世紀に入ると200万を越えました。問題なのは、黒人も白人も薬物をほぼ同じ比率で使用しているのに、黒人は白人の5~7倍の確率で検挙・収監され、しかも罪状が同じにもかかわらず、白人に比べて長い刑期を課されることが常態化しているという事実です」(同)

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