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「マル激 TALK ON DEMAND」【137】

【神保哲生×宮台真司×塚越健司】フェイスブック個人情報商用利用の問題点と論点

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――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

1806_Facebook_200.jpg『デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義』(集英社)

[今月のゲスト]
塚越健司[社会学者/拓殖大学、学習院大学非常勤講師]

世界最大のSNSサイト、フェイスブックが激しい批判にさらされている。昨年来、トランプが勝利した2016年の大統領選挙において、大量の個人情報の流出が発覚、今やマスメディアを遙かにしのぐ世界最大の情報インフラである同サービスのあり方が、政治問題化するに至っているが、個人情報の扱いはどう議論されるべきなのだろうか?

神保 今回は今、世界中で話題になっている「フェイスブック問題」を取り上げます。日本ではフェイスブックはそれほど普及していませんが、海外では数あるソーシャルメディアの中でも圧倒的なシェアを誇っています。そのフェイスブックがここにきて、激しい批判にさらされている背景などを探っていきたいと思います。ゲストは現在、学習院大学と拓殖大学で教鞭を執られている、社会学者の塚越健司さんです。

 さっそくですが、フェイスブック問題はアメリカの議会でも取り上げられていますが、なぜこれほど大きな問題になっているのでしょうか?

塚越 今回問題になっているのは、ケンブリッジ・アナリティカという選挙コンサルティング企業。まず、ケンブリッジ大学で心理学を教えているアレクサンドル・コーガン氏が、2014年にフェイスブック上で動作する「This Is Your Digital Life」という性格診断アプリを作りました。これを30万ほどの人が使った。その人が「いいね」したサイトなど詳細な情報がわかり、それをもとに性格を診断するという仕組みです。そしてコーガン氏は、このアプリをケンブリッジ・アナリティカに売ってしまったのです。これは、当時のフェイスブックの規約にも違反しています。その結果、16年のアメリカ大統領選でさまざまなデータを分析し、広告に利用された。30万人程度のデータなら大したことがないのですが、その「友達」の情報まで取得できるため、8700万人分のデータが使われたとされています。

 この事件を最初に告発したクリストファー・ワイリー氏が、面白いことを言っています。このようなデータを分析すれば、性的嗜好や宗教もわかり、政治的なスタンスまで分析できてしまう。そうして、「人のインナーデーモン(inner demons)=内なる悪魔)を呼び寄せることができる」と。単純な話ですが、人はイライラしている時に誰かを叩きたくなります。さまざまな情報から「このユーザーは今、調子が悪いだろう」という時に、テロ情報などで不安を煽って「トランプのほうが安心できるリーダーだ」という広告を打つとどうなるか。選挙において人の政治心情に対してまで介入することができてしまったのが、今回の一番の問題になっています。

宮台 マーケットリサーチも、まったく同じです。わかりやすく言えば「気分がスッキリするぞ」と言ったほうが釣れる人/釣れる状態、あるいは「安心できるぞ」と言った方が釣れる人/釣れる状態――それを見極めて、“キャッチャーミット”にきちんと投げる。ただ今回の場合は、それをAIでジャッジする、というのが僕らのころとはまったく違います。

神保 「インナーデーモン」というのは、人間の負の部分を引き出すことができる、という理解でいいんですか?

塚越 そうですね。トランプさんを勝たせようと思えば、負の部分を打ち出したほうが有利だから、ということです。

神保 今回はフェイスブックにアプリを提供している会社が、本来は禁止されていたユーザーの個人情報の転売を行ったことが問題になりました。確かに第三者への転売は禁止されていましたが、その一方で、そのアプリの会社が得ていた情報自体は、ユーザー側が提供することに同意していた情報でした。転売が露呈したことによって、ユーザーは自分がそんなに多くの個人情報を自主的に提供していたことに初めて気付きましたが、それまでは特に抵抗もなくそうした情報を出していたわけですね。

塚越 そうですね。アプリを使う時、みなさん規約になんとなく「はい」と押していると思います。同じように今回のアプリについても、ユーザーは14年の時点で、「友達のデータも提供する」という規約に判を押してしまっている。その後15年にフェイスブックは、友達のデータまで取得されるのはマズい、ということで規約を厳格化しています。

 この時同時にコーガン氏がケンブリッジ・アナリティカにデータを売っている、ということにも気付いていました。そこでフェイスブックはデータを削除するよう通告し、彼らは削除すると言ったが、実際には削除せずに選挙に使っていた。だから、フェイスブックは被害者といえば被害者なんです。

 しかし、今、皆が怒っているのは、15年の時点で気付いていたなら、より厳しく追及したり、あるいはこうした情報が漏れていて、政治意識が操作される可能性があるということをアナウンスすべきだっただろうと。情報管理も甘いし、道義的にも問題だということも含めて、アメリカの議会に、フェイスブック社のマーク・ザッカーバーグCEOを呼ぶ、という話になりました。

神保 上院・下院合わせて公聴会は10時間に及び、僕も眠い目をこすりながら見ましたが、同じような質問が繰り返される、かなり冗長な公聴会でした。塚越さんは、どうご覧になりましたか?

塚越 的はずれな質問が多すぎて、ザッカーバーグさんも少し怒った部分もありましたが、概ね、うまい返しをしていて、謝罪とともに今後の対応を伝えていました。そのことで下がり続けていた株価が少し持ち直した――と、一般的なメディアはこういう見方です。しかし「WIRED」といった、いわゆるテクノロジー系のニュースサイトなどは、「核心を突く質問には口を濁し、『これから対処する』くらいしか言えなかった」と厳しく見ています。

 また今回の問題について、フェイスブックは21~22億人のユーザーがいるといわれますが、このようにとんでもない量の情報を一民間企業が持っているというのはどういうことだ、という批判が高まっています。しかも、ザッカーバーグ氏の意向次第で情報管理の質すら、かなりの程度決まってしまう。

 ずさんな管理体制の下で、民主主義の根幹が揺らぐような事件が起きてしまい、私企業であるフェイスブックが力を持ちすぎた、という議論になっているのです。

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