サイゾーpremium  > 特集  > 社会問題  > 【芸能人写真家】の存在価値を査定!

――福山雅治や永瀬正敏など、玄人はだしの写真を撮るとして有名な芸能人たち。彼らは本当に写真がうまいのか? サブカルチャー研究者で、早稲田大学助教を務めるトミヤマユキコ氏が、芸能人カメラマンの真価を一刀両断。芸能人でありながら写真を撮ることをアピールする彼らの自意識を暴く!

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福山雅治や永瀬正敏と比べるといまいち有名じゃないが、玉木宏も相当なカメラ玄人なんですよね。

「趣味はカメラ」と公言する芸能人は少なくない。もちろん同じ表現活動でも、絵を描く人もいれば、造形作品をつくる人、書をやる人だっている。そして、中には趣味の域を超えて、その道のプロとして活動する人も。しかし、さまざまなアート系の趣味がある中で「カメラやってます」とのたまう人間の多さは、特筆に値するだろう。何が彼らを写真へと駆り立てるのか? 芸能人のインスタ写真などに詳しい研究者兼ライターのトミヤマユキコ氏に、写真を通して見えてくる彼らの“欲望”の有様について話を聞いた。

――女優の宮﨑あおいやお笑い芸人の小藪千豊など、「趣味はカメラ」と公言する芸能人は枚挙にいとまがありません。なぜ猫も杓子もカメラなんでしょうか?

トミヤマユキコ(以下、トミヤマ): タレントさんは、ロケや取材などでいろんな場所に行くし、たくさん人に会いますよね。それに我々一般人がめったに見られないものも日常的に見られるわけだから、写真を趣味にしたくなる気持ちはよくわかります。また、周りにプロのカメラマンがたくさんいるから、助言も受けやすい。だから上達も早いし、やってみようと思う人も多いのではないでしょうか。

――写真をやっていることが広く知られている人たちは、それを芸能活動をする上での、ある種の“武器”として活用しているような印象があります。

トミヤマ: 趣味でやっていたことを公にする場合、そこにはなんらかの“欲望”が働いているのは間違いないですよね。それはタレント個人の表現欲・自己顕示欲の場合もあれば、「これは“売り”になるぞ」というような、芸能事務所の欲の場合もある。双方の思惑がうまく絡むと、タレントは写真をみんなに見てもらえるし、事務所としても宣伝になってうれしいという、いわばwin-winな状態になるわけです。

――写真が、セルフブランディングのツールになる、と。

トミヤマ: そうです。多くのタレントは、“アートの文脈”が欲しいんですよ。芸能界の中で頭ひとつ抜ける方法はいろいろあると思うんですが、アート系に強くなるというのは、常にトレンドとしてあると思います。

――写真じゃないですけど、たとえばNHK Eテレの老舗美術番組『日曜美術館』の司会に起用された俳優の井浦新などは、途中から意識的にアート方面での仕事を増やしていった感がありますね。

トミヤマ: まさに成功例ですよね。やっぱり、デビューしていきなりアート系に行こうとしても無理だし、行くのが早すぎると情報がゴチャついちゃってよくわからなくなってしまうから、タイミングが大事なんです。井浦さんなんかはもともとアートに興味があったんでしょうけど、若手イケメン俳優期には露骨にやらなかった。もう何者であるかはわかりました、じゃあ次は? という、いわば芸能人として+αが問われるタイミングで、ビシッとその文脈を出してきた。

――芸人が「本好き」を売りにするのも、それに近いかもしれないですね。

トミヤマ: メインとなる芸事のほかに、何か文化的な匂いのする趣味なり特技なりがあるとよい、というのはひとつの処世術として確立された感がありますね。一般視聴者の食いつきもいいですし。もっとも、一方で女優の臼田あさ美さんのように、ことさらアピールはしないけれどすごく写真が好き、という人もいます。彼女はフィルムカメラユーザーで、相当撮っていると思いますけど、それを仕事には一切使いません。写真集を出すときも、あくまで被写体としてのかかわりに徹しています。きっとそれは、彼女に音楽好き、ファッション好きといった文化的な文脈がすでにあるからでしょうね。付加価値を付けるなら、今の自分にないものを、と考えるのが自然ですから。

――アートの文脈といえば、絵を描く芸能人というのも定番です。

トミヤマ: でも絵は、かなりの鍛錬が必要です。その点、写真はとりあえずシャッターを押せば、何かしらは写る。オート機能を使えば、誰だってそれなりの画が撮れますよね。さらに、写真は撮る側だけでなく、鑑賞する側にとってもお手軽な存在です。絵画には、鑑賞するにもそれなりの「目」が必要です。でも、写真はパッと見て、おいしそうとかキレイとか、珍しい風景が写っている、みたいなところで楽しめてしまうところがある。それゆえに、本質的には撮るのにも見るのにもそれ相応の技術が必要なはずなのに、妙にハードルが低くなっているのかもしれませんね。これは言い換えれば、それだけ写真が我々にとって身近な存在である、ということではないでしょうか。

芸人のコミュ力が“エロさ”を引き出す

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