>   >   > 荒木経惟#MeToo騒動の論点【3】/【板倉由美】法的問題はどこにあるのか
第1特集
荒木経惟#MeToo騒動の論点【3】

【板倉由実】裁判所で認定されやすいのはセクハラよりも肖像権侵害【論点2/法律】

+お気に入りに追加

――エロティックな女性ヌードなどで知られ、世界的な評価も高い写真家・荒木経惟。長年、彼のモデルを務めてきたKaoRiさんによる告発が、「#MeToo」のひとつとして世間をざわつかせた。ただ、この騒動をめぐる議論は錯綜している。そこで、本当に語るべき論点を整理し、問題の本質に迫りたい。

板倉由実(弁護士)

いたくら・ゆみ 東京パブリック法律事務所に所属。労働事件、家事事件、入管・在留資格、外国人事件、女性・ジェンダーにかんする問題などを多く取り扱う。共著に『会社で起きている事の7割は法律違反』(朝日新書)などがある。


1806_04-1_300.jpg
「写真画報」(玄光社)2013年春号に掲載された作品「淫夢」。

 裸を撮影すること自体はKaoRiさんも同意していたようですが、告発文には「私は撮られるだけで、それがどのように使われて行くかは一切知らされていませんでした」とあり、彼女の同意なく写真集やDVDが世界中で販売されました。彼女には肖像権があり、自分の姿を撮られること、撮ったものを公開されることを自らコントロールする権利があります。「この写真をこの目的でここに掲載します」と事前に同意が取れていないのは違法。それは、美術館に展示しようが、商業媒体に載せようが、関係ありません。

 荒木さんには「芸術家の俺に撮られるのだから、うれしいはず」というおごりがあったのだと思います。ただし、KaoRiさん側にも「著名な写真家に見いだされてうれしい」という感情がまったくないかというと、少しはあったのかもしれません。それは恋愛感情とはまったく別のもので、「権力のある人に自分が選ばれた」というある種の優越感です。セクハラの案件にも往々にしてそういった面があります。荒木さんはその気持ちを利用して、きちんとした契約をせずに断れないように仕向けて、なし崩し的に過激な、彼女が想定していなかったような写真を撮らせたり、屈辱的な思いをさせたりしたのだと想像できます。

 これが恋人関係や夫婦関係であれば契約書は不要なのかというと、そんなことはありません。そのときは良好な関係だったとしても、後に悪化して法的なトラブルに発展するケースはたくさんあります。アメリカではそういうトラブルは“起きるもの”という前提で、細かく契約を結びます。しかし、日本において――特にこうした写真業界や出版業界などで慣習的になあなあになっている点は、大きな問題です。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミア

2018年11月号

禁断の家電・ガジェット

禁断の家電・ガジェット
    • テック系企業の【経済地理額】
    • 次世代のテック系【注目都市】
    • 世界を席巻する【アジア家電】
    • 【D.O.I.×BERBAL】安室奈美恵論
    • 【アムロ】を支えたPの本音
    • 知られざる地方【テック企業】
    • 米国【大麻用電子たばこ】産業事情
    • 【星名美津紀】家電とエロス
    • 進化し続ける【アダルトVR】の今
    • 最新【バーチャルセックス】のしくみ
    • 【三代目JSB・山下健二郎】スニーカー愛
    • 【三代目Air Jordan Brothers】選出!
    • 【リバタリアン】生んだネットの終焉
    • 各国【ネット規制】の事件簿
    • 【ゲーム依存】はビョーキか否か?
    • 【モノ雑誌】の「読プレ」豪華番付
    • 【景品表示法】を弁護士はどう見るか

防弾少年団がアメリカを制する日

防弾少年団がアメリカを制する日
    • 今さら聞けない【BTS】基礎講座
    • 数字で見る【K-POP】世界進出
    • BTS支持層【アジア系アメリカ人】の連帯

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 【忍野さら】友達の財布に私のトレカを入れるんです。
    • 【小林レイミ】デビュー4年目の初グラビア!
    • 振り返れば【芽衣】がいる
    • 【電力業界】に切り込んだ元フィンテック起業家
    • 【新潮45】を潰したのは誰だ!
    • 【阿波踊り】内紛の実情
    • 【中国】を支配する巨大顔認証システム
    • 【88ライジング】がアジアと米国を繋ぐ
    • 町山智浩/『ブラック・クランズマン』アメリカ・ファーストを謳うのは誰か
    • 政権の利益誘致政策に踊らされる【英語教育】の欺瞞
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」
    • 「念力事報」/黒い水脈
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 【おとぎ話みたい】文化系男子が患う恋愛の病
    • ギャング集団に所属するアパレル屋
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • ビールの世界を超越し始めた【職人】
    • ひとりぼっちたちを繋ぐ【薔薇族】の誕生
    • 幽霊、雑誌の去勢と俗物主義の衰退。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』