サイゾーpremium  > 連載  > 学者・萱野稔人の"超"哲学入門  > 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第50回/スピノザの【エティカ】を読む
連載
哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第50回

【哲学入門】世界のなりたちを考えるとき、キリスト教的世界観は退けなければならない。

+お気に入りに追加
1804_kayano_520.jpg
(写真/永峰拓也)

『エティカ』

スピノザ(工藤喜作、斎藤博/訳)/中公クラシックス/1900円+税
17世紀オランダの哲学者スピノザの主著。書名の「エティカ」は「倫理学」を意味するが、形而上学、認識、感情論まで、ユークリッド幾何学をモデルにして定理の論証を体系的に展開し、後世の哲学に大きな影響を与えた。


『エティカ』より引用
さて、私がここで語ろうとするすべての偏見は次の一事にもとづいている。すなわち、人々は一般に、すべての自然物が、自分たちと同じように目的のためにはたらいていると思っているばかりか、神自身がいっさいをある一定の目的に導くことを確実であると主張していることである。なぜなら彼らは、神がいっさいを人間のために創造し、また神を崇拝させるように人間を創造したと言っているからである。

 前回はニーチェの哲学をとりあげました。ニーチェがいかにキリスト教的世界観に対抗し、それとは異なる世界観を構築しようとしたのかを考察しました。

 今回はそれに引き続いてスピノザの哲学をとりあげたいと思います。というのも、スピノザもまた当時のキリスト教的世界観にするどく対抗した哲学者だからです。スピノザはキリスト教的世界観をしりぞけながら「世界はどのようになりたっているのか」を徹底的に考察した稀有な哲学者でした。

 スピノザは17世紀オランダで活躍した哲学者です。19世紀に活躍したニーチェより2世紀もまえにキリスト教的世界観に対峙したことになります。そのため、スピノザが社会から受けた風当たりの強さも、ニーチェの場合とはくらべものにならないほどでした。事実、スピノザは生前「無神論者」として多くの人から非難され、主著『エティカ』の出版が生きているあいだになされることもかないませんでした。

 上の引用文はその『エティカ』の一節です。スピノザがこのなかで「偏見」だと指摘しているのは、ほかならぬキリスト教的世界観です。これを読むと、スピノザがかなりはっきりとキリスト教的世界観を否定していたことがわかるのではないでしょうか。引用文の言葉をつかえば「神がいっさいを人間のために創造し、また神を崇拝させるように人間を創造した」と考えること自体、すでに「偏見」だと述べているわけですから。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年2月号

日本のタブー

日本のタブー
    • 【芸能界】権力構造とパワハラの闇
    • 【女性の社会進出】で浮き彫りになった問題
    • 【ヤフーニュース】という怖い権力
    • 【ヤフトピ】が抱える懸念点
    • 【GREEN KIDS】が紡ぐ移民の歌
    • 【共産圏】らで禁忌化するラップ
    • 風水が後押しする【タッキー】社長就任
    • 【豊川稲荷とメリー喜多川】の共鳴
    • 不正入試で揺れる【医学部】の闇
    • 米国の【大麻解禁】と処方薬汚染
    • 【処方薬】の犠牲になったポップスター
    • 塗り替えられた【五輪ユニフォーム】
    • 【原発と精神病院】そして戦後日本
    • 慰めとしての百田尚樹【日本国記】
    • 【ストロング系チューハイ】レビュー
    • ストロングゼロが霞む【米国】ヤバい酒

小阪有花、危険なエロス

小阪有花、危険なエロス
    • 元祖タブーグラドル【小阪有花】

NEWS SOURCE

    • ヤリ手社長の徹底管理!【米津玄師】の実態
    • 【官邸ポリス】と警察官僚内紛の点と線
    • 【ネットフリックス】でテレビ業界崩壊?

インタビュー

    • 【宮下かな子】姉御肌女優の管理術
    • 【舐達磨】シーンをかき回す熊谷のラッパー
    • 【金属バット】劇場出禁!? 異端漫才師の生き様

連載

    • 【長澤茉里奈】ストロング系なんです。
    • 【犬童美乃梨】筋トレ女子、秘密の習慣
    • いとしの【戸田恵梨香】
    • 自由な【インターネット】は終わった
    • 一茂、良純【中年ジュニア】の時代が到来
    • 知られざる【北島三郎】まつり話
    • 【スタバ】を襲う謎のコーヒー起業家
    • 【Zapp】ロボット声の魔力
    • 町山智浩『運び屋』
    • 【ゴーン前会長逮捕】から考える社会の劣化
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子の「ドラッグ・フェミニズム」
    • 「念力事報」/憎みきれないハゲダルマ
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 【ちびまる子ちゃん】がその他大勢に与えた救済
    • 【スヌープドッグ】のローライダーを塗った男
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 不死鳥のごとく蘇った【天才ブルワー】
    • 【ゲイメディア史】群雄割拠時代の幕開け
    • 幽霊、呪われた平成と世直しの幻想。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』