>   >   > 「君たちはどう生きるか」徹底レビュー【3】/これは呪縛の書だ

出版界のヒットメーカーが編集を手がけ、瞬く間に100万部を突破した『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)。糸井重里ら著名人も称賛のコメントを寄せ、メディアにも絶賛の記事が並んでいる。本稿では、そんな同書の裏にあるイデオロギーや時代性を、“サイゾー的”に批評、レビューしてみると……。

中田考・イスラーム研究家

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1960年、岡山県生まれ。東京大学文学部(学士)、同大学院人文科学研究科(修士)、カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。イスラーム政治哲学専攻。同志社大学神学部教授などを経て現在、同大学客員教授。


『君たちはどう生きるか』のメッセージを一言に集約するなら「人間は自分を決定する力を持っている」に尽きるだろう。

 近代西欧が生み出し、世界の植民地化によって全人類に蔓延し病膏肓に入ったこの「自由」のイデオロギーの何よりの問題点は、人々がそれにあまりにも深く洗脳され過ぎて、そのイデオロギー性に気づきさえしなくなっていることである。

 イスラームには、そもそも「自由」などという虚構の概念自体が存在しない。人間は呼吸や心臓の鼓動ひとつ自由にならない。自分の身体のみならず、その生存を支える環境も全て人間が自分で作り出したものではない。自分の思考や気持ちでさえ、自分が作り出したものでも自由にできるものでもない。自分が作ったのではなく、誰が作ったのか分からない太古から受け継がれてきた言語に「浸けられて」育てられることで、知らず知らずのうちに人は人間としての思考や感情を身に着けるのであり、我々は言語によって「考えさせられ」、「思わされ」ているのである。

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