サイゾーpremium  > 連載  > 町山智浩の「映画でわかるアメリカがわかる」  > 町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第120回/『女神の見えざる手』
連載
町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第120回

『女神の見えざる手』――敏腕ロビイストが“ある奇策”で銃社会に宣戦布告

+お気に入りに追加

『女神の見えざる手』

1712_P149_200.jpg

ロビー活動を請け負うコール=クラヴィッツ&Wの花形ロビイスト、エリザベス・スローンは、銃擁護団体から新たな銃規制法案を廃案に持ち込むよう依頼された。だが、これを断ったスローンは、解雇を言い渡されてしまう。そして彼女はある“奇策”に出たが……。
監督:ジョン・マッデン。全国公開中。


 ロビイストという言葉が生まれたのは南北戦争の後、ユリシーズ・S・グラント大統領の時代だと言われている。首都ワシントンのホテルのロビーを行き来する政治家をつかまえて、政策について嘆願する人々だ。

 現在、もっともロビー費用を使う業界は、政府に許認可権を握られている医薬品。そのほか、石油化学、保険、不動産、航空機、音楽などの企業が、毎年数億ドルをロビー活動に投じている。

 ロビイストの仕事は、映画『サンキュー・スモーキング』(05年)に描かれている。主人公はたばこ業界のために、がんの警告表示を強化しようとする政治家とテレビで論戦し、肺がんで死にかけている(タバコ被害を訴える)マルボロマンを買収して黙らせる。ロビイストの活躍にもかかわらず、全米の喫煙率は05年当時の20%から10年間で15%まで減少した。一方、登録された銃の所持者は国民の22%で、喫煙者より多い!

 これはNRA(全米ライフル協会)の力によるところも大きい。19世紀から続く銃所持者の権利団体で、会員数500万人、年に2億5000万ドルもの予算をロビー活動に投じ、銃の所持や販売を規制する法案の数々を潰してきた。

 これに立ち向かうのが、『女神の見えざる手』のミス・スローン(ジェシカ・チャステイン)。保守系の大手ロビー事務所に所属し、連戦連勝の凄腕ロビイストだったスローンはバックグラウンド・チェック法案(銃の購入者の犯罪歴や精神病歴確認の義務付け)を潰すよう依頼される。この法律はブレイディ法とも呼ばれる。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年5月号

「情弱ビジネス」のカラクリ

「情弱ビジネス」のカラクリ

佐山彩香が挑む10年目の"新境地"

佐山彩香が挑む10年目の
    • 【佐山彩香】デビュー10周年グラビア

インタビュー

連載

    • 【都丸紗也華】キラキラ系が苦手なんです。
    • 【岸明日香】唐揚げの音で孤独を癒す
    • 【ラウンドガール】男を"オトす"必殺グラビア
    • いつか【ゴマキ】と朝帰りッ
    • 研究者が予言する【ロボット】の平等な未来
    • 高須基仁/追悼【内田裕也】
    • 【東京】に輸入される祭り文化
    • 【シリコンバレー】が中国ベンチャーをパクる日
    • 【ボブ・マーリー】米国人音楽市場の今
    • 町山智浩/【魂のゆくえ】腐敗した教会と牧師の闘争
    • 【経済統計】の不正と偽装で見えた日本経済
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子の「ドラッグ・フェミニズム」
    • 笹 公人「念力事報」/さよなら平成、ありがとう平成
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/男が期待するヒロイン像にはハマらない『キャプテン・マーベル』
    • 【白塗り店主】の変なバー
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 元チューバ奏者の【チェコ人】が本場のピルスナーで勝負
    • 伊藤文學/【薔薇族】華々しき"摘発史"
    • 幽霊、過去を裁いて復讐する者たち。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』