>   >   > 「マル激 TALK ON DEMAND」【131】/国民はなぜ「現状維持」を選んだ――【衆議院選】の総括

――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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『日本の選挙―何を変えれば政治が変わるのか』(中央公論新社)

[今月のゲスト]
小林良彰[慶應義塾大学法学部教授]

フタを開ければ与党の大勝利に終わった今回の衆議院議員総選挙。野党の分裂やアベノミクスへの評価など、その要因は多々あるだろう。結果として、日本国民は「現状維持」を選んだと慶應義塾大学法学部の小林良彰教授は総括するが、詳細なデータを分析してみると、日本における選挙制度の問題点が浮き彫りになっているという。

神保 今回は衆議院選挙後の初めてのマル激になります。宮台さん、選挙について冒頭で何かありますか?

宮台 今回の選挙の評価については、おそらく2つの焦点があります。

 第1は、自民党が絶対得票率は低いにもかかわらず、284もの議席をとるのはどういうことなんだ、と。

 第2は、野党の分裂により票が割れたことが、よかったのか、悪かったのか。自民党の議席が増えたことが悪かったと仮定して、それでも、これまで烏合の衆であった野党の中に骨太な対立軸が浮かび上がったことは、よかったのではないか。むしろ後者のよかった面が、今後の日本の政治を考えるときに、悪かった面を上回るのではないか、と。

神保 特に希望の党については連日ワイドショーで取り上げられ、1993年の政治改革選挙(自民党55年体制が終わり、細川政権が誕生)の時のドタバタを思い出しました。あの時も、次々と新党が立ち上がり、ワイドショーもその話題で持ち切りでしたが、ひとつ大きな違いがあります。あの時は自民党内の分裂した結果の政局でしたが、今回は野党が分裂しました。ただ、93年も自民党に対抗し得る対立軸をいかにつくるかが焦点でしたが、今回もそれが課題だったのは同じです。

 ゲストをご紹介します。選挙後の恒例で、慶應義塾大学法学部教授の小林良彰先生です。早速ですが、今回の選挙を、どうご覧になりましたか?

小林 さまざまな見方があると思いますが、私は民進党が分裂したのはよかったと思います。民進党のままでは、やはり将来がなかった。3年3カ月の民主党政権に対する総括を自らきちんとしてこなかったのが、一番の問題でした。希望の党の「協定書」にサインをした人としない人ではっきり分かれたのは、彼ら一人ひとりの本当の考えが明らかになった点ではよかったので、これが選挙後に民進党にまた合流しようというのは、最悪の選択だと思います。

神保 さて、投票当日の会見で、安倍(晋三)首相は国民の信任を得たと語り、立憲民主党の枝野(幸男)代表は、「理念、政策をぐらつかせてまで、自民党に対抗する大きなかたまりをつくる、という考え方に対しては、国民の中に相当の拒否感があったことが証明された」と選挙戦を総括しました。

宮台 まず、内閣信任について言うと、有権者の半分が内閣不支持という調査結果がある中で、小選挙区制のテコを使った大勝を信任だといえるのか、という筋論があります。小選挙区の制度的な不公正うんぬんはさておき、民主政で決まった制度のもとで改憲発議も可能な議席数を得たことを軽視してはいけない。そのこと自体に脱法行為はないのです。

 しかし「改憲発議」という括りにも問題があります。野党が分解してよかったことのひとつは、改憲といっても一筋縄ではいかない事実が明らかになったこと。僕は過去20年、対米ケツナメ路線を増幅する改憲と、対米自立路線を立ち上げる改憲と、二方向があるといい、後者、つまり「自衛隊の国軍化を前提とした重武装中立化」を唱えてきました。その意味で、枝野さんは枝野憲法草案を出したほどの改憲派ですが、その発想は僕に近い。

神保 ただ、安倍さんの言う、集団的自衛権を拡大するような改憲には反対だと。その意味では今回の選挙で戦った政党としては、共産党と社民党以外は基本的にすべて改憲勢力ということになります。

宮台 集団的自衛権を拡大する改憲こそ、対米ケツナメ路線を増幅します。問題にすべきは改憲か護憲かではなく、ケツナメ派改憲か自立派改憲かです。国会内のすべてが改憲勢力でも、自立派改憲が多数派なら問題ありません。立法で済む高校無償化みたいなどうでもいい話が取り沙汰されるのは、内容はどうあれ「改憲して歴史に名を残す」といった損得勘定しか頭にないクズ政治家がいるからです。ケツナメ派か自立派かというのは「損得問題」ではなく、正しくない戦争に加担するのは是か非かという「正しさ問題」です。

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