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哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」45回

【哲学入門】公共的な空間をつくるための「活動」は、もっとも人間らしい人間活動である。

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(写真/永峰拓也)

『人間の条件』

ハンナ・アレント(志水速雄/訳)/ちくま学芸文庫/1500円+税
「人間の条件」の基本的な要素となる活動力を「労働」「仕事」「活動」の3つに分け、近代以降におけるその活動力の優位の変化を考察。「労働」優位の近代世界を、思想史的に批判する。『全体主義の起源』と並ぶ、アレントの主著。


『人間の条件』より引用
人びとは活動と言論において、自分がだれであるかを示し、そのユニークな人格的アイデンティティを積極的に明らかにし、こうして人間世界にその姿を現わす。しかしその人の肉体的アイデンティティの方は、別にその人の活動がなくても、肉体のユニークな形と声の音の中に現われる。その人が「なに」(“what”)であるか――その人が示したり隠したりできるその人の特質、天分、能力、欠陥――の暴露とは対照的に、その人が「何者」(“who”)であるかというこの暴露は、その人が語る言葉と行う行為の方にすべて暗示されている。

 前回から引き続き、今回もハンナ・アーレントの『人間の条件』を取り上げましょう。

 アーレントはその著作で、人間が存在するためには三つの活動の次元が必要だと論じました。その三つの活動の次元とは「労働」「仕事」「活動」です。つまり、人間が生存していくためには、その条件としてこれら三つの活動をおこなわなくてはならないとアーレントは考えたんですね。

 これら三つの活動の次元のうち、アーレントがもっとも重視したのは「活動」です。「活動」とは、前回からの繰り返しになりますが、人間が集団生活のなかで共通のルールを定めたり、互いの利害を調整したり、秩序を維持したりすることを指しています。いわば集団生活のなかで生じるさまざまな公共的な課題を解決していくことが「活動」と呼ばれているんですね。一般に政治と呼ばれる人間社会の領域はこの「活動」をつうじて生じてくるものです。

 人間は生存していくためには食料を調達したり安全を確保したりしなくてはなりません。そうした人間活動をアーレントは「労働」と呼びました。ただしその「労働」を人間は一人でおこなうことはできません。つねに集団のもとで、他者の力を借りたり他者と協力したりして、生命維持のための基本的な活動(労働)をしています。たとえば自分で生活に必要なものすべてを生産するのでなければ、私たちは他者が生産した食料や衣服や道具を買わなくてはなりません。ここにはすでに他者との協力関係が生じています。

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