>   >   > 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第45回/ハンナ・アレントの【人間の条件】を読む
連載
哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第45回

【哲学入門】公共的な空間をつくるための「活動」は、もっとも人間らしい人間活動である。

+お気に入りに追加
1711_kayano1711_520.jpg
(写真/永峰拓也)

『人間の条件』

ハンナ・アレント(志水速雄/訳)/ちくま学芸文庫/1500円+税
「人間の条件」の基本的な要素となる活動力を「労働」「仕事」「活動」の3つに分け、近代以降におけるその活動力の優位の変化を考察。「労働」優位の近代世界を、思想史的に批判する。『全体主義の起源』と並ぶ、アレントの主著。


『人間の条件』より引用
人びとは活動と言論において、自分がだれであるかを示し、そのユニークな人格的アイデンティティを積極的に明らかにし、こうして人間世界にその姿を現わす。しかしその人の肉体的アイデンティティの方は、別にその人の活動がなくても、肉体のユニークな形と声の音の中に現われる。その人が「なに」(“what”)であるか――その人が示したり隠したりできるその人の特質、天分、能力、欠陥――の暴露とは対照的に、その人が「何者」(“who”)であるかというこの暴露は、その人が語る言葉と行う行為の方にすべて暗示されている。

 前回から引き続き、今回もハンナ・アーレントの『人間の条件』を取り上げましょう。

 アーレントはその著作で、人間が存在するためには三つの活動の次元が必要だと論じました。その三つの活動の次元とは「労働」「仕事」「活動」です。つまり、人間が生存していくためには、その条件としてこれら三つの活動をおこなわなくてはならないとアーレントは考えたんですね。

 これら三つの活動の次元のうち、アーレントがもっとも重視したのは「活動」です。「活動」とは、前回からの繰り返しになりますが、人間が集団生活のなかで共通のルールを定めたり、互いの利害を調整したり、秩序を維持したりすることを指しています。いわば集団生活のなかで生じるさまざまな公共的な課題を解決していくことが「活動」と呼ばれているんですね。一般に政治と呼ばれる人間社会の領域はこの「活動」をつうじて生じてくるものです。

 人間は生存していくためには食料を調達したり安全を確保したりしなくてはなりません。そうした人間活動をアーレントは「労働」と呼びました。ただしその「労働」を人間は一人でおこなうことはできません。つねに集団のもとで、他者の力を借りたり他者と協力したりして、生命維持のための基本的な活動(労働)をしています。たとえば自分で生活に必要なものすべてを生産するのでなければ、私たちは他者が生産した食料や衣服や道具を買わなくてはなりません。ここにはすでに他者との協力関係が生じています。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミア

2018年2月号

マンガ(禁)大全2018

マンガ(禁)大全2018
    • 【マンガ業界】最新動向
    • ネット時代【リイド社】の戦略
    • 【韓国】ウェブトゥーンが凄い
    • 【韓国マンガ】傑作6選
    • 【しらほしなつみ】コミケで見られない素顔
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【お笑い芸人・おたけ】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【田中考】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【辛酸なめ子】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【精神科医・岩波明】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【クロサカタツヤ】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【磯部涼】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【小林雅明】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【更科修一郎】
    • 【井出智香恵】背筋も凍るレディコミ
    • 【リバーズ・エッジ】映画化のナゼ
    • 肉食系女子が読む【岡崎京子】座談会
    • 【少女マンガ】のファッション研究
    • プロが見る【風早くん】の服装
    • 服部昇太【80年代】マンガへの礼賛!
    • 【ナチス描写】の海外規制事情
    • 【エロ描写】は海外でこう扱われる!
    • 本家を超える【スピンオフ】を探せ!
    • マンガの神様の【スピンオフ】作品
    • ポスト【ウシジマ】貧困マンガ
    • 【藤子・F・不二雄】の変態的な性癖
    • マンガ家【下半身ゴシップ】

基礎教養としてのフリーメイソン

基礎教養としてのフリーメイソン
    • 【橋爪大三郎×フリーメイソン幹部】陰謀論の基礎知識

酒井萌衣「卒業」と「初体験」

酒井萌衣「卒業」と「初体験」
    • 【酒井萌衣】元SKE48が初水着!

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • マルサの女/【わちみなみ】
    • 【柳ゆり菜】初めてジャネットで踊った日
    • 【岡田サリオ】時代は巨乳から巨尻へ
    • 【沙月とわ】海に行ったことがない女
    • 巨人のコーチになった異色の陸上選手
    • 私と【美玲】を連れてって
    • 2018年は本格的なIT制度の見直しが始まる
    • 高須基仁の「全摘」
    • 【ヤリマン】のトークに無限の可能性
    • 【アイドル】が音頭に没頭する背景
    • 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」
    • 【AV出演強要問題】女優たちの悲痛な願い
    • 【新型うつ病】が隆盛する生きづらい日本
    • 町山智浩「映画でわかる アメリカがわかる」/『スリー・ビルボード』
    • 【ポスト・トゥルース時代】の保守とリベラルの役割
    • 小原真史の「写真時評」
    • 「念力事報」/UFO入門2018
    • ジャングルポケットの「アダルトジャングル探検録」
    • なぜ女芸人は「ブス」をネタにするのか?
    • アッシュ・ハドソンの「アングラ見聞録」
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」/span>
    • 幽霊、それでもマンガは楽しき商売。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』