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「マル激 TALK ON DEMAND」【130】

【神保哲生×宮台真司×土屋信行】世界一災害に弱い東京――備えなき首都大災害

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――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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『首都水没』(文藝春秋)

[今月のゲスト]
土屋信行[公益財団法人リバーフロント研究所技術参与]

ドイツ保険会社によると、東京は“ダントツ”で世界一災害に弱い都市だという。元々東京は、徳川家康が江戸に幕府を開いて以来、水害と戦ってきた歴史がある。氾濫を繰り返す利根川の流れを変えるなど、治水事業に注力してきた。だが、都庁で災害対策に取り組んできた専門家によると、現在の水害対策はまったく不十分だという。

神保 今回は「洪水」の話をしたいと思います。8月に「異常気象を日常としないために」というテーマで議論しました。そこでは、異常気象が多発している背景には大気の変動など自然現象という面もありますが、同時に地球温暖化など人間が引き起こしている部分もある、という話でした。

 今回は、異常気象の原因がなんであっても、我々は大きな被害を出さないように備えておかなければならないはずなのに、どうもそれが十分にできていないようだ、という話です。

宮台 気候変動で海水温が上がり、これから台風もますます大規模化していきます。今まで人間が作り出していた潜在的な危険が、これから顕在化していくということですね。

神保 我々がどれだけ水害に対して無防備であるか、実際にどれくらい危険なのかという話を、専門の方に伺いたいと思います。ゲストは東京都庁で長く防災に携わっておられた、土屋信行さんです。

 ご著書に『首都水没』(文春新書)という衝撃的なタイトルがあり、帯にはさらにショッキングな「東京は世界一危ない都市だ!」という言葉が書かれています。これは大げさではなく、実際に保険会社が査定した結果だそうです。2014年に出された本ですが、あえてそのタイミングで水害の話をしようと考えた理由とは?

土屋 例えば地震については、誰もが大きな被害を生むと認識していますが、水害については正常化バイアスというか、「自分は大丈夫だ」という意識が非常に強いんです。地震で亡くなる人がいない年は、幸いにしてある。しかし、水害は例外なく、毎年どこかで人が亡くなっています。そこに対して、少し警鐘を鳴らしたいと考え、本を書きました。

宮台 今年もそうですね。九州や名古屋など、ニュースを見てみなさん「大変だ」「かわいそうだ」と思っていらっしゃるが、なぜか「明日は我が身」とは受け取りません。

神保 水害で毎年多くの人が死んでいるのに、なぜ我々は地震などと比べて、水害をあまり深刻に受け止めない傾向があるのでしょうか?

土屋 やはり「体験」ですよね。ビスマルクは「賢者は他者の歴史に学び、愚者は己の経験に学ぶ」と言いましたが、自分が体験していないと、それはないものだというふうに思ってしまう。残念なことに、私たちは核家族になってしまいました。おじいさんやおばあさんに話を聞く機会が失われていることも大きいと思います。

神保 経験を共有できなくなってしまったと。ここにミュンヘン再保険会社による、「世界大都市の自然災害リスク指数」(出典:東京新創造、2017)というものがあります。これを見ると、東京・横浜が「710」で、世界でも断トツで1位になっています。その次に大きいのがサンフランシスコの「167」、ロサンゼルスが「100」ですから、東京の危険さは群を抜いているのがわかります。ちなみにニューヨークは「42」、ロンドンは「30」です。この指数は「災害度×脆弱性×危険度」で求められるそうですが、10段階評価で東京は災害度が10、脆弱性が7・1、危険度が10です。東京の災害度が10なのに対し、例えばニューヨークは0・9です。

 元々地震や水害など災害の危険性が高いのに、災害に対する備えができていないのですから、世界一危険な都市になってしまうのも、無理からぬことでしょう。

土屋 重要なのは「脆弱性」というところで、すなわち備えをしているかどうか。東アジア・モンスーン地帯は必ず台風が通るわけで、言ってみれば受験生が出題される問題を教えてもらっているようなもの。しかし、それに対してきちんと備えていない、ということです。

宮台 おそらく、小学生、中学生、高校生などがそれを聞くと、近くに大きな川が流れているわけではないし、東京の多くの居住地は山間にあるわけでもなく、何が危険なのか、備えとは何だろう、と思ってしまうでしょう。

神保 東京の「地形」が、ひとつのキーワードになるようです。東京の等高線図を見ると、地盤沈下等で標高がマイナスのところがかなり広範囲に広がっています。また、東の下総台地と西の武蔵野台地が高くなっている。この地形も危険度と関係があるのでしょうか?

土屋 東京は「低平地」で、広域に見ると、多摩川や荒川、利根川などが運んできた土砂が積もって、ようやく海から少しだけ陸地ができた、という低い場所です。西の武蔵野台地は、箱根の山と富士山が火山灰を降り積もらせたものですね。

宮台 「下町」(低平地)と「山の手」(武蔵野台地)と言いますね。

土屋 低平地であるということは、つまり山岳地域に降った雨は、必ず東京に降りてきます。それが利根川、荒川など、下町を通るんです。基本的に、川が氾濫して起こる洪水は下町のほうで起こり、ゲリラ豪雨のようなものでいきなり水位が上がって家屋が沈んでしまうような災害については、神田川や妙正寺川のような中小河川で発生します。

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