>   >   > 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第44回/ハンナ・アレントの【人間の条件】を読む
連載
哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第44回

【哲学入門】人間存在に必要不可欠な三つの条件とは何か?

+お気に入りに追加
【哲学入門】人間のの画像1
(写真/永峰拓也)

『人間の条件』

ハンナ・アレント(志水速雄/訳)/ちくま学芸文庫/1500円+税
「人間の条件」の基本的な要素となる活動力を「労働」「仕事」「活動」の3つに分け、近代以降におけるその活動力の優位の変化を考察。「労働」優位の近代世界を、思想史的に批判する。『全体主義の起源』と並ぶ、アレントの主著。

『人間の条件』より引用
人びとは活動と言論において、自分がだれであるかを示し、そのユニークな人格的アイデンティティを積極的に明らかにし、こうして人間世界にその姿を現わす。しかしその人の肉体的アイデンティティの方は、別にその人の活動がなくても、肉体のユニークな形と声の音の中に現われる。その人が「なに」(“what”)であるか――その人が示したり隠したりできるその人の特質、天分、能力、欠陥――の暴露とは対照的に、その人が「何者」(“who”)であるかというこの暴露は、その人が語る言葉と行う行為の方にすべて暗示されている。

 人間を理解すること。これは哲学にとってきわめて重要なテーマです。たとえば私たちは、ひとはなぜ生きるのか、と問うことがありますよね。やはり私たちは“自分が生きることの意味”に無関心ではいられないのでしょう。同じように私たちは、自分はどう生きるべきか、と問うことがあります。この問いにも、“自分が生きることの意味をつかみたい”という私たちの欲求があらわれています。

 ただし、哲学が人間を理解しようとするとき、その問いは上のような“生きることの意味”を考えるものばかりではありません。たとえば哲学の世界では、人間が生きるとはそもそもどういうことか、と問われることがあります。この問いは上の“生きることの意味”を考える問いとは似て非なるものです。というのもそれは、ひとはなぜ生きるのか、と問うまえに、そもそも人間が生きるとはどのようなことか、を考えようとするわけですから。

 こうした問いは、哲学では存在論的な問いといわれます。これに対して、先の“生きることの意味”を考えるような問いは意味論的な問い、もしくは当為論的な問いといわれます。なぜ後者の問いが「存在論的な問い」だといわれるのかというと、それはその問いが、人間が存在するとはどのようなことか、を問うものだからです。

 要するに、哲学が人間を理解しようとするとき、そこにはおもに二つの問いのたて方があるということです。一つは意味論的に問うというやり方であり、もう一つは存在論的に問うというやり方です。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミア

2018年11月号

禁断の家電・ガジェット

禁断の家電・ガジェット
    • テック系企業の【経済地理額】
    • 次世代のテック系【注目都市】
    • 世界を席巻する【アジア家電】
    • 【D.O.I.×BERBAL】安室奈美恵論
    • 【アムロ】を支えたPの本音
    • 知られざる地方【テック企業】
    • 米国【大麻用電子たばこ】産業事情
    • 【星名美津紀】家電とエロス
    • 進化し続ける【アダルトVR】の今
    • 最新【バーチャルセックス】のしくみ
    • 【三代目JSB・山下健二郎】スニーカー愛
    • 【三代目Air Jordan Brothers】選出!
    • 【リバタリアン】生んだネットの終焉
    • 各国【ネット規制】の事件簿
    • 【ゲーム依存】はビョーキか否か?
    • 【モノ雑誌】の「読プレ」豪華番付
    • 【景品表示法】を弁護士はどう見るか

防弾少年団がアメリカを制する日

防弾少年団がアメリカを制する日
    • 今さら聞けない【BTS】基礎講座
    • 数字で見る【K-POP】世界進出
    • BTS支持層【アジア系アメリカ人】の連帯

NEWS SOURCE

    • 【キンプリ】K-POP化の浅はかな皮算用
    • 【吉澤逮捕】で変わるモー娘。
    • 【瀬古】の横暴に振り回されるマラソン界

インタビュー

    • 【坂ノ上茜】特撮もチアもこなすブラン娘
    • 【レイザーラモンRG】あるある芸人の技と内情
    • 【松村厚久】病を跳ね飛ばす実業家の野心

連載

    • 【忍野さら】友達の財布に私のトレカを入れるんです。
    • 【小林レイミ】デビュー4年目の初グラビア!
    • 振り返れば【芽衣】がいる
    • 【電力業界】に切り込んだ元フィンテック起業家
    • 【新潮45】を潰したのは誰だ!
    • 【阿波踊り】内紛の実情
    • 【中国】を支配する巨大顔認証システム
    • 【88ライジング】がアジアと米国を繋ぐ
    • 町山智浩/『ブラック・クランズマン』アメリカ・ファーストを謳うのは誰か
    • 政権の利益誘致政策に踊らされる【英語教育】の欺瞞
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」
    • 「念力事報」/黒い水脈
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 【おとぎ話みたい】文化系男子が患う恋愛の病
    • ギャング集団に所属するアパレル屋
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • ビールの世界を超越し始めた【職人】
    • ひとりぼっちたちを繋ぐ【薔薇族】の誕生
    • 幽霊、雑誌の去勢と俗物主義の衰退。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』