>   > 【町山智浩】が語る最も危険なアメリカ映画/トランプ現象はすべて映画で予言されていた?

――トランプ大統領誕生後、なにかと注目を集めるアメリカの動向だが、現在これらを予見したとされる映画が話題になっている。こうした作品が映画専門チャンネル「スターチャンネル」で放送されるという。

 アメリカではドナルド・トランプという型破りな人物が、多くの批判を受けながらも、大統領に就任した。映画評論家の町山智浩氏は、著作『最も危険なアメリカ映画』(集英社インターナショナル)において、このトランプ現象を予見した作品を取り上げている。そんな町山氏に“危険なアメリカ映画”について話を聞いた。

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(撮影/吉岡教雄)

 このトランプ現象をもっとも的確に予言していたのが、四半世紀前に作られた、『ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄』【1】(92年)という作品でしょう。株式投資で成功したビジネスマンのボブ・ロバーツは、保守的で女性差別的な考え方の持ち主ながら、自作のフォークソングで民衆の心をうまくつかみ、政治家として頭角を現していきます。「国境の壁から入ってきたやつが仕事を奪う」と公言するなど、あまりにも主張がトランプに似ているので、現在アメリカでも再注目されています。わかりやすい演説で政治を語れば、それが汚い言葉であっても票が集められるというのは、まさにポピュリズムなのですが、それを描いているのが、『群衆』【2】(41年)と、『群衆の中の一つの顔』【3】(57年)。 『群衆』は、『スミス都へ行く』(39年)で、コモンマン(普通の男)がエリートよりもいい政治をする、という大衆の素晴らしさを描いたフランク・キャプラ監督が、一転してコモンマンによる政治の危うさを描いた作品です。

 女性記者が架空の投書を書いたところ、それが評判になり、ホームレスの男をその筆者としてでっちあげます。彼はやがて庶民の立場から政治や金持ちを批判する人物としてスターになるのですが、結局はそれも資本家によって操られていて、資本家は彼の人気を利用して独裁政権を打ち立てようとするのです。草の根の反体制運動だと思っていたものが、実は金持ちに操られていたというのは、まさにアメリカで09年から始まった、反オバマ運動であるティーパーティ運動そのもの。ティーパーティもオバマ大統領の医療制度改革に反対する保守系の草の根運動だと思われていましたが、実質はコーク兄弟という石油コングロマリットの経営者に操られていました。『群衆』を見ると、そういう構図が40年代の映画でもう描かれていたのか、と驚きます。

『群衆の中の一つの顔』も、ホームレスの男がテレビタレントになって、庶民の支持を集めるという映画ですが、ここで特徴的なのは、庶民の味方のはずなのに「福祉に頼るのはアメリカ的ではない」と、福祉批判をすることです。「福祉を削れ」ということは、『ボブ★ロバーツ』でも声高に主張されていますが、これはレーガン政権が打ち出した新自由主義経済の影響を受けています。富裕層が優遇されて労働者の仕事が海外に出て行くことに対する大衆の鬱憤をすくい上げるのが、なぜか保守的な資本家であるという構図は、生粋のビジネス成功者であるトランプ大統領にも共通しています。

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