>   >   > 安倍首相が主役のルポルタージュ読み比べ/現役記者が読む【安倍晋三】本

――山口敬之『総理』『暗闘』、阿比留瑠比『総理の誕生』、青木理『安倍三代』。“保守街道”をひた走る安倍晋三。彼を描いたルポ本も花盛りだ。そんな「安倍本」を、新聞記者らはどう読むのか? 何人かの現役記者に徹底取材!

話題の3人のジャーナリストが描く安倍晋三首相の姿とは?『総理』はただのヨイショ本!現役記者が読む「安倍本」の画像1
元TBS記者・山口敬之著『総理』『暗闘』/『総理』は16年6月、『暗闘』は17年1月、共に幻冬舎より刊行。『総理』は17年4月に文庫化。

 安倍晋三首相自身、ないしその政策を素材とした書籍が花盛りだ。いわゆる“分析本”だけにしぼってみても、小川榮太郎『約束の日 安倍晋三試論』(12年、幻冬舎)、田﨑史郎『安倍官邸の正体』(14年、講談社現代新書)、朝倉秀雄『官邸支配』(16年、イースト・プレス)、朝日新聞取材班『この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か』(16年、筑摩書房)、大下英治『安倍官邸 「権力」の正体』(17年、角川新書)等々、枚挙に暇がなく、特に政権が長期安定期に入った近年になればなるほど、出版数は増えている印象だ。

 なかでも注目を集めているのが、3人の現役ないし元記者による以下のルポルタージュ──山口敬之『総理』『暗闘』、阿比留瑠比『総理の誕生』、そして青木理『安倍三代』の4作品。そこで本稿では、現役新聞記者のコメントを借りながら、この4作を読み解いてみたい。

 まずは、レイプ騒動──それも、被害者女性の顔出し告発という異例の形まで飛び出しての──でも話題の、元TBS記者・山口敬之氏が著した2著作について。

「山口さんはTBSワシントン支局長時代の15年、ベトナム戦争時代の韓国軍慰安婦の存在について『週刊文春』に実名で記事を発表、この記事がきっかけとなり同社を退職したという人物。TBS時代からパワハラ的な言動は有名で、あのレイプ騒動もむべなるかなという感じ」(全国紙社会部記者)

 そんな山口氏は安倍首相と近いことで知られ、件のレイプ騒動がいったん沙汰止みになったのも、その近さを警察が“忖度”したからではとの憶測もある。その“安倍本”第1作『総理』は、07年9月、第1次安倍政権崩壊の場面から始まる。安倍首相のこの突然の辞任をスクープしたのはTBSであり、つまりはこの山口氏であるのだが、基本的に同書は、安倍首相にまつわる迫真の場面描写で話が進み、非常に読みやすい。志半ばでの首相辞任、臥薪嘗胆、再起を誓った雌伏時代、首相に返り咲き、消費税をめぐっての財務相・麻生太郎との攻防戦、巨大帝国アメリカを率いるオバマ政権に対しての「モノ申す外交」──こうしたカッコイイ場面が次から次へと登場し、表紙でポーズを取る、同じくカッコイイ安倍首相の写真ともあいまって、血湧き肉躍る青春小説のようである。

「基本的にはヨイショ本なのですが、見てきたような場面描写がこれでもかと繰り返されるのは、映像出身の人ならではなのかもしれません。首相が尊敬するとされる祖父・岸信介との比較も無批判に繰り返され分析も浅く、読みやすいけど、とにかく『首相周辺からこれだけたくさんの話が聞けたのね』という印象しか残らない。まあ、半分は安倍首相との近さをアピールするための自慢本なのでしょう」(同)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミア

2018年6月号

オトナの写真学

オトナの写真学
    • 【アラーキー問題】の本質とは?
    • 【小原真史】私写真という怪物について
    • 【板倉由美】法的問題はどこにあるのか
    • 【黒瀬陽平】法に触れた芸術家は沈黙すべきでない
    • 【田中東子】フェミニズムとアラーキー
    • 進化する【LGBT】写真の美意識
    • インスタ炎上姫【水原希子】研究
    • 【水着グラビア】は性の商品化か?
    • アメリカ写真雑誌と【人種差別】
    • 奇妙すぎる【戦争写真】を発掘
    • サイゾー的【カメラ批評】
    • 写真が形作ってきた【偽史】
    • 報道写真をめぐる【加工】の境界線
    • 歴史を変えた【報道写真】の光と影
    • 【AI】進化でカメラマンが消滅する日
    • 世界を変える最先端【画像技術】
    • 【学問としての写真】最新潮流
    • 海外の【写真教育】事情
    • デジタル時代の【お焚き上げ】事情

忍野さら"暗室"グラビア

忍野さら
    • 【忍野さら】の危険な部分にレンズが迫る

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 【日向カリーナ】筑前煮が好きなんです。
    • 【優木まおみ】アイドルから教わる初心
    • 【原あや香】モグラ女子の謎の習慣
    • パラリンピック1964-2020
    • 【彩芽】とスキャンダル
    • 漫画村が開けた「ブロッキング」のヤバさ
    • 高須基仁の「全摘」
    • 異様な空気が高揚を促す【奇祭】
    • 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」
    • 【ミシェル・ンデゲオチェロ】丸刈り才女の面目躍如
    • 【森友文書改ざん】法務省が抱えた積年の恨み
    • 統合失調症や自閉症は【母親】のせい!?
    • 町山智浩/『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』正義のラケットで女生憎悪を打ち砕け!
    • 【フェイスブック】個人情報商用利用の問題点
    • 小原真史の「写真時評」
    • 「念力事報」/燃える宇船
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 【星野源】ドラえもんの歌詞の妙技
    • ガンズ・アンド・ローゼズTシャツをめぐる裏話
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 幽霊、性からの逃走に聖痕の闘争を。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』