>   >   > 佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第104回/メディアとして【写真】が再定義される
連載
【最終回】佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第105回

アーカイブ機能を喪失した今、メディアとしての写真が得た相互作用ツールという再定義

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

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『SNS時代の写真ルールとマナー』(朝日新書)

インスタグラムをはじめ、写真を共有するSNSが隆盛を誇っている。ツイッターやフェイスブックにも、日々大量の写真が流れ込んでくる。かつて写真は、記録を目的としたメディアであった。だが今や、その機能は薄まり、新たな定義を獲得しつつある。本連載最終回となる今回は、テクノロジーによって著しく意味を変えた、このメディアを考察する。

 写真を共有するSNS「スナップチャット」の運営会社「スナップ」が、大型株式上場で話題になっている。上場時の評価額は250億ドル(約2兆8000億円)になるとも言われているほどだ。

 スナップはSNS企業だが、自社を「カメラ会社」と定義している。写真を共有するためにはカメラが必要なのは事実だが、スマホやデジカメなどのハードウェアを作っているわけではない。ではなぜカメラ会社なのだろうか?

 スナップ社の意図は、カメラの再定義ということのようだ。そもそもカメラの歴史を振り返ってみれば、それは記録のための発明だった。自分が今見ているものを記録したい。思考や会話、金銭のやりとりを記録するために文字が生まれたのと同じように、「視覚を記録したい」というのは人類の長い期間の欲求で、これに応えるかたちでカメラが発明されたのである。

 最初期のカメラは、16世紀の「カメラ・オブスキュラ」。ピンホールカメラと同じ原理で、壁に小さな穴を開けて外光を採り入れ、それが室内の壁に投影されて屋外の風景を映し出すことができた。しかし像を化学的に固定する方法はまだ発見されておらず、投影風景を画家がトレースして模写するだけだった。

 19世紀になって、化学的な処理で像を固定する方法が編み出される。最初に写真が撮影されたのは1827年、フランス人のジョゼフ・ニエプスによってである。当時は8時間もの露光が必要だった。のちにダゲレオタイプなどの技術を経て感光乳剤が開発され、19世紀の終わり頃からフィルムが普及していき、20世紀はフィルムの時代となった。

 アナログフィルムの時代は、記録することは依然として貴重だった。フィルムや現像焼き付けの価格は高く、保存するのにも場所が必要だったからだ。しかし21世紀に入ってデジタルカメラが普及し、さらにスマートフォンによって写真を撮影する行為が極めて日常的になっていき、記録のコストも限りなくゼロに近づいていく。結果、アーカイブの意味自体が希薄になってきた。「記録すること」「保存すること」の価値が減少してきたのである。

 記録の価値がない時代に、風景を固定する写真という装置にはなんの意味があるのか? それをスナップは再定義しようとしているのだ。そして同社はこう説いている。「写真は人と人のコミュニケーションのために撮影されている」

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