>   >   > 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」36回/ヘーゲル『法の哲学』
1702_kayano_520.jpg
(写真/永峰拓也)

『法の哲学』(Ⅰ・Ⅱ巻)

ヘーゲル(藤野渉・赤沢正敏/訳)/中公クラシックス(01年)/1500円(Ⅰ・Ⅱ)+税
「理性的なものは現実的なものであり、現実的なものは理性的なものである」という有名な言葉でも知られる大著。「法」「正義」「権利」など人間社会全般に通じる概念の本質を明らかにしようとする法・政治哲学の金字塔。

『法の哲学』より引用
そこで実際、本稿は、国家学をふくむかぎり、国家を一つのそれ自身のうちで理性的なものとして概念において把握し、かつあらわそうとするこころみよりほかのなにものでもないものとする。それは哲学的な著作として、あるべき国家を構想するなどという了見からは最も遠いものであらざるをえない。そのなかに存しうる教えは、国家がいかにあるべきかを国家に教えることをめざしているわけはなく、むしろ、国家という倫理的宇宙が、いかに認識されるべきかを教えることをめざしている。(中略)存在するところのものを概念において把握するのが、哲学の課題である。というのは、存在するところのものは理性だからである。

前回から引きつづき、今回もヘーゲル『法の哲学』の一節について考察していきましょう。

 ヘーゲルは上の引用文のなかで、この『法の哲学』は哲学的な著作であるかぎり「あるべき国家を構想するなどという了見からは最も遠いものであらざるをえない」と述べています。つまり、国家を哲学的に考察することは、「国家はいかにあるべきか」「どのような国家が望ましいのか」を考察することではない、ということです。私たちは国家を哲学的に考察するなんてきくと、思わず「国家はいかにあるべきか」「どのような国家のあり方が望ましいのか(共和制国家なのか、君主制国家なのか、福祉国家なのか、最小国家なのか……)」ということを考察することだと考えてしまいがちですが、ヘーゲルによれば、哲学はそうした「べき」論とは何の関係もないということです。

 では、国家を哲学的に考察するとはどういうことでしょうか。引用文の最後の部分でヘーゲルはこう述べています、「存在するところのものを概念において把握するのが、哲学の課題である」と。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミア

2018年5月号

ウェブ(禁)新論

ウェブ(禁)新論
    • 【ウェブ編集vs雑誌編集】討論会
    • 【ジャニーズ】動画ビジネスの是非
    • 【元NMB・高野祐衣】が美ボディ披露
    • 動画配信サービスと【JKの本音】
    • 【72歳】のユーチューバーが登場
    • 【Creepy Nuts】がヒップホップ動画を斬る
    • アジア人ラッパーがバズる【88rising】
    • 【88rising】の気鋭アーティスト6選
    • 大手企業が群がる【eスポーツ】
    • 【学者vs業界団体】がガチバトル
    • 検閲とエロの【中国ウェブ文化】
    • 【ライブチャット】が流行る中国
    • スラムと【マフィアとグロ動画】
    • 【Amazon】がテレビ局になる日
    • 【インド市場】で動画配信戦争が勃発
    • 【民泊利権】に群がる宿泊&住宅サイト
    • ネット配信が【AV】に与えた影響
    • 【配信専属AV女優】は何を思う?

マンガで学ぶ「(裏)社会学」

マンガで学ぶ「(裏)社会学」
    • 【実際のヤクザ】に聞いた下半身事情
    • 【ヲタめし】ハロプロヲタのライブ後

華村あすか、19歳のプライベートセクシー

華村あすか、19歳のプライベートセクシー
    • 【華村あすか】クダモノとカラミます。

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 【橋本乃依】芸能界1年生が描く青写真
    • 【想田和弘】「観察映画」に託した未来
    • 【桜井莉菜】35歳現役ギャルモデルの提言
    • 【DJ CHARI&DJ TATSUKI】最先端ヒップホップの形

連載

    • 【アンジェラ芽衣】けっこう根暗なんです。
    • 【宮下かな子】森田童子にゾクゾク
    • 【冨手麻妙】映画界に愛された女優の身体
    • 密かに好成績を残した剣の貴公子
    • 【由美子】の夢は夜ひらく
    • 行政法研究者が語る日本の行方
    • 高須基仁の「全摘」
    • 【品川ヒロシ】が夜通し語る映画愛
    • 継続危機と対峙する【秋田の伝統祭】
    • 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」
    • 【XXX Tentacion】SNS厄介者たちの続く伝説
    • 【元スパイ襲撃被害】スパイによる本当の諜報活動
    • ナチスの【優生学】が投げかけるもの
    • 町山智浩の「映画でわかるアメリカがわかる」/『サバービコン』
    • 実話を元に描かれた【映画でわかる】社会の病巣
    • 小原真史の「写真時評」
    • 「念力事報」/森友ふたたび
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 女はなぜ皆【星野源】を欲するのか?
    • 俺と伝説のラッパーたちとの交遊録
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 幽霊、文化系連合赤軍な雑誌の終焉。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』