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佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第102回

人工知能が金融市場からヘッジファンドを退場させる? AIとマネーゲームの関係

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

―― 人工知能の日進月歩の成長が、日々ニュースになっている。生活に密着する分野から囲碁や将棋のようなゲーム、そして今やそれは金融の世界で莫大な数字を稼ぐものにもなった。今回の本連載では、AIの進化が世界の金融市場に今後もたらすであろう変化の方向性を考える。

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『60分でわかる! AIビジネス最前線』(技術評論社)

 私が毎週MCを務めているラジオ番組『タイムライン』(TOKYO FM)でしばらく前に、ソニー銀行の執行役員などを務められた櫻井豊さんと話す機会があった。櫻井さんは『人工知能が金融を支配する日』(東洋経済新報社)という非常に興味深い本を出されている。

 この本では、米国のヘッジファンドなど投資企業がテクノロジーを駆使し、大きな運用益を上げている実態が描かれている。例えばコンピュータが行う超高速の株の裁定取引がある。裁定取引とは、ある株について、一時的に異なる価格が複数の市場間で生じてしまったときに、割高なほうを売り割安なほうを買って、その後に両者の価格差が小さくなったところで再び売買して利益を得る手法だ。

 大口の投資機関A社が「B社の株を1000株買いたい」と発注したとする。これによってB社の株は値上がりが予想される。アメリカには全土に10以上の証券取引所があり、法的な制約などさまざまな事情から、大口の売買については複数の証券取引所に分割して発注するのが一般的だという。そこで投資機関A社は1000株の購入を、C取引所、D取引所、E取引所に分割して発注することになる。取引は通信回線を経由して行われるので、各取引所に届く発注にはマイクロ秒ほどのわずかな遅延(レイテンシー)が生じる。このレイテンシーを利用して、遠隔地の取引所に発注が届くよりも先にその取引所でB社の株を安く買っておけば、値上がりの差益を得ることができる。ヘッジファンドはわずか1マイクロ秒程度のレイテンシーを出し抜くために、テクノロジーに莫大な投資をしているのだ。

 このような恐ろしい行為に手を染めているアメリカの金融業界が、AI(人工知能)に目を付けないわけがない。人材のヘッドハントも含めて、ヘッジファンドはAI業界に手を伸ばしつつあるという。これまでファンドマネージャーの経験やカンに頼っていた投資が、膨大なビッグデータを猛烈なスピードで解析するAIに任されるようになれば、人間よりもずっと緻密で確度の高い判断を下せるようになる。

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