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哲学者・萱野稔人の"超"哲学入門 第31回

【哲学入門】「非常事態」において主権者はどう行動するのか――主権者と法の関係性

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(写真/永峰拓也)

『政治神学』

カール・シュミット(田中浩、原田武雄・訳)/未來社(71年)/1800円+税
ナチズムの政治理論を支えたとされるドイツの法哲学者カール・シュミットの1922年の著作。下に引用した冒頭の一文がとくに有名で、「例外状況」から国家と主権者、その決定についての問題を考察していく一冊。

『政治神学』より引用
主権者とは、例外状況にかんして決定をくだす者をいう。

 このところ「緊急事態」だとか「非常事態」といった言葉をしばしば聞くようになりました。たとえば2015年11月、フランスのパリでコンサートホールやサッカー場などを標的としたテロ事件が発生し、120人以上が死亡しました。これを受けてオランド大統領はフランス全土に非常事態を宣言。これによって警察当局は、裁判所の令状がなくても家宅捜索ができたり、公共の秩序と安全に対し危険な活動をしているとみなした人々を自宅軟禁することができたりと、警察権限が強化されました。

 また、今年7月にはトルコで軍の一部によるクーデタ未遂事件が起き、それを受けてエルドアン大統領が3か月間の非常事態を宣言しています。この非常事態宣言によって、エルドアン大統領を議長とする閣僚会議は、国会の審議を経ずに法律と同等の効力をもつ政令を発布することができるようになりました。つまり、政府が国会の審議をとびこえて国民に直接命令できるようになったんですね。この非常事態宣言がだされて最初に発布された政令は、犯罪への関与が疑われる人物を訴追なしで拘束できる期間を、従来の最長4日間から非常事態期間中は30日まで延長できる、というものでした。

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