>   >   > 【京都社会】の裏側を描くブックガイド

――今月の特集では、観光や宗教、または芸能、音楽といったアプローチから“京都”という街を見てきた。だが一方で、表立っては語られづらい“タブー”も存在する。本稿では、そんな京都の暗部、そしてタブーに正面から向き合った力作を紹介したい。

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『水平社の原像―部落・差別・解放・運動・組織・人間』(解放出版社)

 全国水平社創立の地であり、部落解放運動が長らく行われてきた京都。戦後は被差別部落への同和予算を確保するために激しい行政闘争が行われ、その運動は着実に部落の貧困問題を改善するなど、多くの成果を挙げていった。だが一部では、運動に関わる団体の腐敗も進行。暴力団が関わったエセ同和行為も横行し、暴力団同士の抗争を生み出すことにもなった。そんな京都の知られざる歴史や裏社会を描いた力作には、どのような本があるのだろうか。

 まずは連日マスコミを賑わせた、殺人事件から。2013年、『餃子の王将』運営会社の代表が、京都市山科区の本社前で射殺された事件はニュースでも大きく報じられた。真相は今も未解明だが、同社の調査報告書では、創業家との関係が深い企業グループとの不適切な取引が発覚。約200億円の資金流出と、約170億円余りが未回収であることが明らかになった。なお『京都の裏社会 山口組と王将社長射殺事件の聖域』【1】では、その企業グループの代表が、元部落解放同盟中央執行委員長の故・上杉佐一郎氏の異母弟であると記している。

 この報道に部落解放同盟の名前が出てきて驚いた人もいるだろうが、冒頭で記した通り、京都は部落解放運動と非常に馴染みが深い。こちらの記事でも詳しく解説したが、京都の被差別部落の歴史や差別問題を研究する京都産業大学教授・灘本昌久氏はこう語る。

「日本の主要な部落の多くは南北朝時代~室町時代の頃にその原形が生まれましたが、京都をはじめとした関西圏では、各部落が独自に発展を遂げ、規模を拡大してきた歴史があります。ただ、昔から現在に至るまで、被差別部落に対してひどい差別が同じようにあったわけでもなく、貧乏だったわけでもありませんでした。江戸時代に雪駄が流行した時期などは、その素材となる牛の解体処理を独占していた部落が大変な利益を挙げ、藩や幕府から部落への贅沢禁止令が出たほどでした。ただ、莫大な利益をもたらしていた履き物産業は、西南戦争後の松方デフレにより壊滅的な被害を受けてしまった。そこから部落に深刻な貧困問題が発生したんです」

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