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高山真が読む今月のサイゾー/オトコとオンナとアイドルと【10】

大人こそが励まされる、Sexy Zone・中島健人の「一生懸命は美徳」

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――女性向けメディアを中心に活躍するエッセイスト・高山真が、世にあふれる"アイドル"を考察する。超刺激的カルチャー論。

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『黒崎くんの言いなりになんてならない』映画HPより

 観ちゃった…。Sexy Zoneの中島健人の主演映画『黒崎くんの言いなりになんてならない』を映画館で…。いえ、だって、20代後半の女友達が「意外にしっかりした映画だった」と言っていたし…。「たまには邦画を観に行こうかしら」と思っていたところに女友達が「もう1回観に行こうかと思ってるんだけど」とか言うものだから…。

 って、ホント言い訳がましいったらありゃしません。というわけで、女友達にくっついて私も渋谷の映画館に突入です。ええ、さすがにひとりで観に行く勇気はありませんでした。ゲイとはいえ、私はいい年の「非・女装」。グッチだのドルガバだのに身を包み、それなりに若作りもしていますが、要するに見た目はフツーのプチオヤジ。映画館にひとりでいたら、メインターゲットの若い女子層をムダにざわつかせるだけですし…。

 70年代生まれの私が、まさかこの年になってアイドル映画を映画館で観ることになるとは。『黒崎くんの~』より前に映画館で観たアイドル映画は、薬師丸ひろ子の『Wの悲劇』。1984年公開ですから、もう30年以上前のことになります。しかも薬師丸ひろ子目当てではなく、エキセントリックな大女優・羽鳥翔(はとり・しょう)を演じた三田佳子目当てでした。自分でも「どんな中学生よ!?」と思いますが、ゲイの友人たち(マツコ・デラックスなど含む)も、映画公開当時、それぞれの地元で三田佳子激推しだったことを知り、「オカマってのは誰に教わるわけでもなく、幼少期から似たようなものを好きになるもんなのね」と、不思議な感慨に浸ったものです。

 それはそれとして、『黒崎くんの言いなりになんてならない』、DVDリリースを待っている人たちもいらっしゃるでしょうから、ネタバレになるような解説は控えますが、中島健人は非常に頑張っていたと思います。「非常に頑張っていた」と言うと、どうにも上から目線な言葉のように聞こえるかもしれませんが、これは40代が22歳に贈る最大の褒め言葉だとご理解いただきたい。この年齢差で「こんなカレシがいたらなあ」とか「キュンキュンきちゃった(ハート)」みたいな感想を抱いたとしたら、そちらのほうがはるかにスキャンダラスです(もちろん、この年齢差で実際に愛し合っている人たちの場合、それは大変に美しい物語ですが、子どもほどの年齢の芸能人に向けて、私のような「すれっからし」が抱く感情としては無理がありすぎます)。

 中島健人が演じるのは「超ドSの高校生」という役どころでした。メインターゲットのお若い方々は文字通りの「S」として受け取ったでしょうが、私はあえて断言します。中島健人の演じる「S」は、「サービスのS」です。

「求められていることを、求められている以上のレベルでやりちぎろうとする意気込み」のことを「サービス精神」と言いますが、中島健人はそれに関して、かなりの突き抜け感がある。私は以前、この連載で中島健人のこの種の意気込みの「濃さ」について書いていますが、この映画は「現時点における『濃さ』の集大成」という感じでした。

「ドSアゴクイ」「ドSキス」「ドSバスタイム」などなど、さまざまな「ドSシーン」のすべてにおいて、誰の目から見ても「サービス」のほうに寄っている瞬間がある。なるほど、「根っこの真面目さ」というのは、こういうところでもダダ漏れになるんだなあ、と。そういう印象も含めて、「非常に頑張っていた」という感想につながったわけです。

 正直言って、この映画で「白王子=優しくスイートな高校生」を演じていた千葉雄大のほうが、ナチュラルなドS具合でいったら上でしょう。私が忘れられないのは、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)という番組の、半年ほど前のオンエア回。進行を担当する加藤綾子アナが、男性ゲスト相手にモテ仕草を披露して、そのゲストを照れまくらせ&骨抜きにしてみせる(で、同じことを女芸人がやると笑いが起こる)、というのがこの番組のお約束のひとつですが、私の知る限り、加藤アナを逆に照れまくらせ、女芸人を赤子の手をひねるがごとくに瞬殺した唯一の男性芸能人が、千葉雄大です。『久保みねヒャダ こじらせナイト』(フジテレビ)にゲスト出演した際も、ヒャダインをいいように翻弄しまくっていました。私はそれを見て「頑張ってる」ではなく「小悪魔どころか、すでに悪魔がやや入ってる」と思ったほどです。

 中島健人が現在ピンでレギュラー出演しているのは『林先生が驚く初耳学』(MBS・TBS系)という番組。そこでメインを務める塾講師・林修氏と中島健人は「ラブラブ」という設定なのですが、そこでの中島健人は「林修氏をナチュラルに手玉にとっている」というよりは、「ガッツリ集中して役目を演じている」というイメージです。一度、千原ジュニアが「おふたり、イチャイチャすな!」と突っ込んだとき、照れ笑いを浮かべて小さな声で「すいません」と漏らした様子のほうが「素」なのだろう、と、たいていの人が予想できそうなほどの集中っぷり。こういう「一生懸命」を見せられると、おばちゃんは弱いのよ…。

「一生懸命であることは、美徳」というのが芯から理解できるようになるのは、大人になってからなのかもしれません。そして、自分が若かったときよりはるかに一生懸命な、いまどきの若い子たちを見ることは、大人にとっては喜びなのです。コンサート行ってみようかしら。ええ、もちろんその時も、女友達にくっついていくことになるでしょうが…。

高山真(たかやままこと)
男女に対する鋭い観察眼と考察を、愛情あふれる筆致で表現するエッセイスト。女性ファッション誌『Oggi』で10年以上にわたって読者からのお悩みに答える長寿連載が、『恋愛がらみ。 ~不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)という題名で書籍化。人気コラムニスト、ジェーン・スー氏の「知的ゲイは悩める女の共有財産」との絶賛どおり、恋や人生に悩む多くの女性から熱烈な支持を集める。現在、「マイナビウーマン」というサイトでも、期間限定の連載『マコトねえさんの恋愛相談バー』を執筆中。

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