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――批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]× 藤川大祐[千葉大学教育学部教授]

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開発幸治の進む渋谷駅南口方面をロケ地に、緑がかった画面の色彩が特徴的なMV。キレの良いダンスが光る。

昨夏誕生したAKBの“公式ライバル”第二弾である欅坂46が、ついにデビューを果たした。MVはすでにYouTubeで再生回数1000万回を越え、『ミュージックステーション』への出演も果たしたこの曲と彼女たち、一体何がすごいのか?

藤川 最初に欅坂46(以下、欅坂)の文脈的な位置づけを簡単に整理しておくと、まずAKB48の公式ライバルとして2011年に乃木坂46(以下、乃木坂)が誕生して、その流れを汲む新しいプロジェクトとして15年に生まれたのが欅坂です。オーディションの結果発表が乃木坂と同じ8月21日で(乃木坂は11年8月21日)、『乃木坂ってどこ?』と同様に『欅って、書けない?』【1】という冠番組がテレビ東京系の深夜で始まり、オーディション発表の翌春にCDデビューをし──と、乃木坂の足跡を追うように進んできている。そしてグループとしての基本的なフォーマットも乃木坂のそれに従っている。だから欅坂の話をする前に、乃木坂の話をしておきましょう。

 48グループと46グループのコンセプトの最大の違いは、構造なのか個人なのか、というところだと思います。48グループは私から見ると、構造、つまり仕組みが面白いんですね。一人ひとりのメンバーの能力というよりは、仕組みの中で各自ががんばる姿を見せている。乃木坂も最初はそうだったんですが、一方で「乃木坂らしさ」というのがずっとキーワードとしてあった。生駒(里奈)さんのAKB兼任【2】が終わった15年夏のライブの課題がまさに「乃木坂らしさとは何か?」で、そのあたりから明らかに48グループとは違う路線を探し始めた。そこで出てきたのが、一人ひとりのメンバーがもともと持っているものを活かす方向だった。仕掛けて面白くするのではなく、個性を活かすために楽曲をつくったりファッションモデルをやったり、という方向に転換したわけです。それが言ってみれば乃木坂フォーマットで、これを欅坂は引き継いでいる。

宇野 これを言うのは非常に勇気がいるけど、グループ単位で考えた時に、今乃木坂は女子アイドルの中で一番強いですよね。実質的な訴求力という点において、もちろん絶対量はAKBなんですけど、10周年を越えて今難しい時期にいるのに対して、乃木坂は量こそ劣るけれど勢いがすごい。1期生の中心メンバーは非常に脂が乗っていて、背後には逸材だらけの2期生が控えている。09~10年頃のAKBと同等か、それ以上の戦闘力があるんじゃないか。

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