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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第96回

『完全なるチェックメイト』――天才か狂人か?冷戦に翻弄されたチェスプレイヤー

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『完全なるチェックメイト』

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冷戦下、アメリカとソ連はベトナム戦争という代理戦争の泥沼にはまっていった。一方、チェス界では1人の天才アメリカ人チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーに注目が集まる。そして1972年、チェス世界王者決定戦で彼は、ソ連のチャンピオン、ボリス・スパスキーに挑戦することに。しかしその後、彼の運命は一転する……。

監督:エドワード・ズウィック/出演:トビー・マグワイアほか。12月25日、全国ロードショー。


 1949年、6歳のボビー・フィッシャーは孤独だった。母は姉とボビーを看護師として女手一つで育てたが、仕事と左翼運動で忙しくて、子どもにかまわなかった。姉と2人で家にいる間、お菓子屋で買ってもらった子ども用のチェスと教本のセットで遊んだ。そしてチェスに取りつかれた。落ち着きがないボビーは「独りで」チェスをしている間だけおとなしかった。それからボビーはチェス世界一への道を駆け上がっていった。

 映画『完全なるチェックメイト』は、史上最強のチェス・プレイヤーといわれたボビー・フィッシャーが、72年に世界チャンピオンのボリス・スパスキー(ソ連)に挑戦した世界王者決定戦を描いている。

 当時、アメリカはベトナム戦争に負けつつあった。アメリカ人であるボビーとソ連のチャンピオンの戦いには政治的に重要な意味があった。ニクソン政権の国務長官キッシンジャーはボビーを国家的英雄に祭り上げたかった。しかし、ボビー本人は壊れつつあった。

「僕はチェスの天才じゃない」ボビー (トビー・マグワイア)は言う。「天才がたまたまチェスをやっているだけだ」

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