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佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第84回

アップル初のウェアラブル「アップルウォッチ」を我々は過小評価しすぎてはいけない

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

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『Apple Watch スタートブック』(SBクリエイティブ)

 去る4月24日、アップルウォッチが発売になった。アップル新製品恒例の店頭に並ぶ人も出て、少々話題になったものの、実際のところ、その有益性に対しては疑いの目を向ける人も多い。はたして我々はこの新製品を、どう受け止めるべきなのだろうか?

 ついにアップルのウェアラブル製品Apple Watch(以下、アップルウォッチ)が発売された。この製品をめぐっては、絶賛する人がいる一方で、疑念を呈する人たちもいる。実際、購入した人たちからも「スマホの情報が腕に表示されるだけで、何が斬新なのかよくわからない」「使い道がよくわからない」といった声が出ているようだ。

 私も現時点では、まだ未完成な製品だと捉えている。つまり身体に装着するウェアラブルデバイスには非常に大きな可能性があるが、現在のアップルウォッチは、その一部のポテンシャルしか活用できていないということだ。

 この点について、米テック系メディア「ビジネスインサイダー」が「評論家の批判にもかかわらずアップルウォッチの可能性が大きいことは、iPodの歴史を見ればわかる」という記事を掲載している。

 Macintoshというパソコンで成功したアップルが、「Mac以後」で最初に成功した製品がiPodだった。発売されたのは2001年で、14年前のことになる。重要なポイントは、iPodは最初から「単体で動く」ことを前提にしていなかったという点だ。Macに接続してiTunesを起動しないと、楽曲を収めることさえできなかった。しばらく後にWindows用のiTunesアプリもリリースされたが、いずれにしてもパソコンが必要なのは変わりなかった。

 こういうマーケティング戦略を、タイイング(tying=束縛)という。このタイイングによって、iPodは成功したといわれている。つまり、非常に普及している製品に新製品を「縛り付ける」ことによって、新しい製品の普及の起爆剤としたわけだ。

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