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佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第82回

個人宅宿泊仲介サービス「Airbnb」が象徴するシェアエコノミーの時代

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み! 

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 個人の所有・賃借する家や部屋を、これまた個人の旅行者に仲介するサービスが世界で人気になりつつある。日本に根づくにはまだ問題点も抱えているが、このサービスが実現しているのは、単に旅行の低価格化だけではないようだ。その真に象徴するものを探ってみたい。

 モノを所有するのではなく、共有する。個人の部屋を短期滞在で貸すサービス「Airbnb」が日本でも認知されるようになり、ここにきてシェアエコノミー(共有経済)が再び活況に入りつつある。この市場はどこまで広がるのだろうか。

 Airbnbは非常に便利で安価なサービスで、世界中で普及している。ホストになりたい人は自分の住んでいる部屋や所有している家などを写真と共に登録し、宿泊したい人はウェブサイト上で物件を検索し、予約する。2008年にローンチし、いまや192カ国・3万3000の街で、80万以上の物件を紹介しているという。日本でも利用者が急増中。ホストも増え、東京で検索すればマンションの部屋などがたくさんヒットし、海外からの旅行者にも数多く利用されているようだ。日本観光は最近の円安の影響もあって世界的に人気だが、Airbnb日本法人によると「東京はAirbnbで最も人気が高いのに、最も物件が少ないエリア」だとか。旅行者に部屋を貸すことは副収入にもなるから、今後さらにホストは増えていくだろう。

 Airbnbには一戸建ての一室だけを貸すようなケースもあるが、多くは「マンションの一世帯まるごと」「一戸建てまるごと」を貸し出している。住んでいる人はどうするのだろう? という疑問が湧くが、ひとつは富裕層が余っている所有物件を貸しているケース。そしてもうひとつは、普通にマンションに入居している人が、自分が不在の時にだけ部屋を貸すケース。中には、宿泊予約が入ったら、その時は友人宅や実家に転がり込む、というようなつわものもいると聞いた。

 私もこれまでに何度かAirbnbを利用している。昨年秋には、バリ島のチャングーというエリアにあるプライベートヴィラをAirbnbで借りて宿泊した。

 プライベートヴィラというのは、個人が所有している別荘のような家を、一般のお客さんでも借りられるようにしたものだ。寝室とリビングルームがあって、加えてキッチンがあったり、小さなプールがついているものもある。豪華だが、友人数人でシェアすればひとりあたりの金額はそんなに高くはなく、ラグジュアリー感の高い施設を気楽に楽しむことができる。この手の宿泊施設はバケーションレンタルと呼ばれ、以前から旅行のひとつの市場として存在していた。

 個人の家や部屋を不特定多数の人に貸すというAirbnbが普及してきて、そこにバケーションレンタルの宿泊施設も流入するようになった。つまりは個人と個人をマッチングするというよりは、消費者に対してビジネスとして家を貸すという提供の形が増えてきたということだ。日本でも貸別荘や住宅会社のモデルルームが、Airbnbで貸し出されているケースがあるようだ。個人の家からプライベートヴィラ、貸別荘、プチホテルまで、ありとあらゆる宿泊先を横断的に探すことのできるポータル的なサービスへと進化してきているのかもしれない。

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