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第1特集
ひとりで棚100メートル担当する書店員のブラック労働

版元も取次ももはや諦め気味?困難極める書店チェーンの経営事情

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――アマゾンの席巻や電子書籍の普及で、本格的に書店の経営状況がヤバいことになっている、とはここ数年言われ続けてきた。そこにきて消費税増税で、この春夏も閉店・廃業を余儀なくされる書店の数は激増。紙媒体ではなかなか突っ込んで取り上げられないこの危機的状況を、現場の声を交えてレポートしたい。

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 今、本稿を読んでいる人は、本誌をどちらで手にしたのだろうか。店舗型書店、オンライン書店、コンビニなどが考えられるが、「店舗で購入した」という人の数を聞くのは少々怖い。その数字に書店業界の深刻さが生々しく表れていそうだからだ。

 もっとも、店舗で買おうにも近所に書店がないという声もあるかもしれない。昨今、街の書店がかなりのハイペースで姿を消している。1990年代後半から街の書店が姿を消している背景には、経営者の高齢化や後継者不足による転廃業、売り上げが伸び悩む中での競合の激化、資金繰り悪化による閉鎖などの理由が存在する。また、近年はアマゾンや楽天ブックスのようなネット書店の台頭が、店舗の売り上げをさらに圧迫している。

 旧来の書店事業が立ち行かなくなりつつある今、時代の流れに合わせた在り方を本格的に模索しなければ、業界の存続は危うい。とはいえ、雑誌で頻繁に特集を組まれるオシャレな書店が、明日を担うモデルになるとも思えない。そこで本稿では、出版・書店関係者への取材を通じて、「本を売る」という書店の根幹たる業務がなぜこの時代に難しくなっているかを探り、これからの書店の在り方について考察したい。

 まずは2000年前後からメディアで叫ばれ続けてきた「書店業界の衰退」を、数字の面から見てみよう。出版科学研究所によれば、紙の出版物(書籍・雑誌)の販売金額は1996年に過去最高の2兆6564億円を記録。ところが97年以降はほぼ一貫してマイナス成長が続き、昨年は1兆6823億円にまで下落。およそ15年で紙の市場はピーク時の2/3に縮小した。

 市場縮小に伴い、生き残りをかけた書店同士の生存競争は激化していく。書店調査会社アルメディアによると、00年当時、全国に2万1495軒あった書店は、13年には1万4241軒に激減。ここには本社・外商部など商品を置かない事業所が1200ほど含まれているため、一般の消費者が利用できる書店は1万3000軒ほどになる。

 数字の上では13年間で7000軒が姿を消した計算。だが、正確には「13年間で約8000軒の書店が新規開店し、約1万5000軒が閉店。業界全体で約7000軒の縮小」となる。閉店数は単純計算で毎年1200軒程度。月100軒以上が店じまいしているのだから、結構なペースだ。

 では、具体的にどんな書店が姿を消しているのか。結論から言うと、独立系あるいは地場チェーンと呼ばれる、地域で数店舗を構える中小書店である。前出・アルメディアの調査「書店規模による市場占有の状況」からは、この10年間で書店の店舗形態に大きな変化が生じたことが見て取れる。

 紀伊國屋書店新宿本店(1450坪)やジュンク堂書店池袋本店(2000坪)などのメガ書店を含む500坪以上の大型店舗は、03年から13年の間に8.5%から23.0%にシェアを拡大。同じく300~499坪の大型店舗も19.2%から24.2%に数字を伸ばした。

 一方、100〜299坪の中型店舗は42.8%から34.9%に、40〜99坪の小規模店舗は19.0%から12.0%に、39坪以下の店舗は10.4%から5.9%に軒並みダウン。この10年間で書店業界のトレンドは「店舗の大型化」に傾いている。

 これらのデータからわかる通り、現在の書店業界では「ナショナルチェーンが店舗の大型化を仕掛け、それに対抗できない中小書店が潰れていく」という構図が生まれている。座り読みができる設備やカフェを併設するほか、品揃えやサービスも充実し、販売力も専門性も高い大型書店を近くに作られては、競争力、採算性に劣る中小書店はひとたまりもない。体力のない街の本屋や中小書店が1日1店舗以上のペースで姿を消しているのだ。かといって、ナショナルチェーンもマイナス成長が常態化し、まったく楽観視できる状況ではない。この時代、無傷でいられる書店など、どこにも存在しないのである。

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