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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第11回

悩めるメーカーの福音となるのか? オープンイノベーションを支えるファブ文化の行方

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通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

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 かつて世界を席巻した日本の電機メーカーが苦しんでいる。悪いのは経営状況だけでなく、製品開発にも及んでおり、新製品を発表してもユーザーの反応はイマイチで、売れ行きは右肩下がり。そんな悪循環の一因は、多様化した消費者ニーズに、企業の旧来的な製品開発体制が追いついていないところにある。その一方で、3Dプリンタなどの新しいデジタル工作機械によるもの作りが世界中でムーブメントとなっている。単なる「個人的な趣味」を越える品質や規模で製品を作れる環境が整ったことで、「もの作り」の世界に大転換が起きている。そんなファブ文化を支える拠点のひとつ「FabCafe」で、もの作りの世界で何が起きているのかを探った。

クロサカ 3Dプリンタなどの普及に伴い、「個人によるもの作り」が注目を集めています。その拠点のひとつ「FabCafe【1】」を運営するロフトワークの石川真弓さんをお招きしました。今はどんなお仕事をされているんですか?

石川 FabCafeと、運営会社であるロフトワークの広報も担当しています。最近は、クライアント企業のプロジェクトも担当していて、ある精密機器メーカーのオープンイノベーションプロジェクトをお手伝いしています。

クロサカ もともとインターネット関連を手がけていた企業が、オープンイノベーション【2】ファブリケーション【3】などの新しいもの作りにかかわることが多いですね。

石川 ロフトワークは2000年に設立され、デジタルコンテンツなどを手がけてきました。今ではプロジェクトも多様化し、例えば、三井不動産「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」などのプロデュースもしています。弊社代表である林千晶が、伊藤穰一【4】氏が所長を務められるMIT Media Labの所長補佐になったことをきっかけに、手がけるプロジェクトも幅広くなってきました。ここ数年でオープンイノベーションとか共創などのニーズが、企業側でも増えてきたようですね。

クロサカ 僕も本業で、3~4年前からそうした相談を受けることが増えました。閉鎖的な環境でのもの作りに限界を感じて、オープンじゃないとだめだという声が上がり始めています。そうした取り組みとインターネット関連企業は親和性が高いのかもしれませんね。

石川 ロフトワークのように、インターネットに慣れている点は、ひとつの要因かもしれないです。製造業の人に話を聞くと、Facebookページをひとつ始めるにしても、社内での承認手続きが非常に大変です。そういう企業から「何かを変えてくれそう」と期待していただくことが多いですね。このFabCafeのように、クリエイターが集まる場を目に見える形で持っているのが大きいみたいです。

クロサカ そうした外部の声を製品開発に生かそうという取り組み自体は、テストマーケティングなどの形で昔からあった。でも、最近のオープンイノベーションの盛り上がり方、企業からの期待は、昔のものとは違う印象を受けます。

石川 それだけ企業は切実な状況にあるのかもしれません。ウェブ上に作られたコミュニティを軸とした製品開発は、無印良品など数多くの事例【5】があります。ただ、企業の側もまだ、オープンであることには、完全に踏み切れていないようです。ある製品の試作機を作って、消費者や外部の開発者を招いて「これの使い方を自由に考えてください」ということはやっても、企画や仕様設計の段階から製品を作った事例は、まだあまり見かけません。

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