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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【24】

裁判員制度導入で"得"をしたのは誰か?

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

今月のニュース

「裁判員が5万人突破」
最高裁判所のまとめによると、14年5月末までの累計で、選任された裁判員の数は3 万7698人、補充裁判員の数と合わせると、09年5月の裁判員制度開始から約5年で5万人を突破した。また、裁判員裁判対象事件の被告として起訴された人の数は8210人で、罪名別の内訳は、強盗致傷1975人、殺人1710人など。量刑別に見ると、死刑21人、無期懲役139人、無罪34人などとなっている。
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 2009年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、同年8月に初の裁判員裁判が東京地裁で開かれてからはや5年。今や裁判員制度関連のニュースは、刑事司法をめぐるトピックとしてすっかり定番化しています。14年6月には、09年に千葉県松戸市で発生した強盗殺人事件の被告に対し、裁判員裁判の千葉地裁で下された死刑判決を、東京高裁が「殺害数1人で計画性なき場合には死刑は選択されないという先例の傾向がある」との理由で破棄し、無期懲役を宣告。市民の下した死刑という重大な判断が覆されたこの一件は、裁判所の相変わらずの"量刑相場"重視の姿勢を示すものとして大きく報じられました。

 ただ、そのようにメディアを通じて国民に伝わる情報は断片的で、裁判員制度の全体像をつかむのは難しい。おそらく多くの国民の間では、「結局、なぜ今、日本に裁判員制度が導入されたのか?」という根源的な疑問がくすぶり続けていることでしょう。

 有権者から無作為に選んだ裁判員を特定の重大な刑事裁判の審理に参加させることにより、量刑に国民の感覚を反映させ、かつ捜査や裁判の密室性を低減して司法に対する国民の理解を促す、という理念のもとに導入された裁判員制度。ただ、そうしたお題目はさておき、裁判員制度導入の実情を知るには、その裏で交錯したであろう関係者らの思惑や、政治的・歴史的・社会的要因に目を向けねばなりません。そこで本連載では2回に渡り、そうした観点から裁判員制度導入の舞台裏をのぞいてみましょう。まず今回は、刑事司法という切り口で考察します。

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