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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第80回

スポーツ・エージェントらが夢見るインド発アメリカン・ドリーム

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『MILLION DOLLAR ARM』

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地位も名誉も獲得した敏腕スポーツ代理人JB・バーンステインは、インドを舞台にしたヒット作をヒントに、インドで豪速球を投げる逸材を発掘する番組『ミリオン・ダラー・アーム』をひらめいた。クリケット大国であるインドには、「豪腕ピッチャーが眠っているはず!」と考え、彼らをメジャー・リーグに輸出すべく奮闘するが……。
監督:クレイグ・ギレスピー/出演:ジョン・ハム、アラン・アーキンほか。

 『ミリオン・ダラー・アーム』は、時速145キロのボールを3回続けてストライクゾーンに投げ込んだ人に賞金100万ドル(約1億円)というコンテストをインドで行ったJB・バーンステインというスポーツ・エージェントについての実録映画だ。

 2008年、JBは40歳を前にして何でも持っていた。ホームラン王バリー・ボンズもクライアントだった。アメリカのプロ・スポーツ選手は10億円以上の契約金で知られるが、エージェントはその4~10%を持っていく。しかも、そういうクライアントを何人も抱えているエージェントの年収は選手よりも多い。

 JBは最高のスーツを着てフェラーリやポルシェを乗り回し、最高級クラブのVIPルームに顔パスで入ってモデルの美女を独り暮らしの豪邸にお持ち帰り、翌朝は相手の電話番号も聞かずにバイバイ。でも……何かが足りない。

 JBはぼーっとテレビを観ていた。画面にはアカデミー作品賞に輝いた『スラムドッグ$ミリオネア』。急激に発展するインドで撮影されたオール・インド人・キャストの世界的ヒット作。チャンネルを変えるとスーザン・ボイル。素人オーディション番組で発見された天才おばさんシンガー。JBはひらめいた。インドの人口は11億人だ。それだけいれば、メジャー・リーグでスターになれる剛速球投手もいるに違いない!

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