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第1特集
ジャニザイルのカネ回りはいかに!?【1】

ジャニーズはセブン&アイ型でLDHはイオン型!? 上下3万円のジャージが命運を握るLDH商法

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――すでに男性アイドルとしては比類なき帝国を築き上げてきたジャニーズに対して、新興戦力ながら巨大化していくEXILE。売り上げ高では、まだまだ遠く及ばないものの、ベンチャー経営者さながらの経営手腕で多角化していくEXILEの商法を、ジャニーズと比較しつつ、検証してみた。

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LDHの事業の主軸のひとつである、ダンススタジオ。撮影すると怒られるらしい。

「中心にいられるように準備していきたい」と、2020年に開催される東京五輪の開会式に意欲を見せたEXILEのリーダー・HIRO。この発言に対してネットでは批判で炎上したが、今や、ヤンキー系パフォーマーを取り揃えたEXILE TRIBEを従えて、エンターテインメント業界で大成功しているように見える。

「HIROは03年、LDHを立ち上げ、エイベックスから独立(ただし、LDHの大株主はエイベックス・松浦勝人社長であり、現在も業務提携をしている)。LDHは、07年3月期の時点で、売り上げ高が約17億円でしたが、08年3月期には約76億円と4倍近い伸びを示し、09年3月期の売り上げ高は約100億円と急成長。11年3月期には200億円目前まで迫りました。

 13年にはCD不況にもかかわらず、シングル『EXILE PRIDE ~こんな世界を愛するため~』が101・1万枚で初のミリオンを記録し、5大ドームツアーでは100万人を動員。HIROが年末にパフォーマーを引退したという効果もあって、14年3月期は初の200億円超えが確実視されています」(芸能記者)

 今後、LDHの社長業に専念するというHIROは、プロデューサー、実業家の道を歩むという。

「すでに、音楽版権会社LDHミュージックのほかに、アパレル業のLDHアパレル、飲食業のLDHキッチンなどの子会社を立ち上げています。そのほかに、ダンススクール(EXPG)も経営しており、中学校の保健体育でダンスが必修化されるなど、経営的な追い風も吹いています」(同)

 最近は、特にアパレル『24karats』を積極展開している。

「ファン以外から見れば、単なるヤンキーファッションのド派手なジャージ上下が3万4560円~とバカ高い。しかし、EXILEメンバーや『HIROからもらった』とAKB48メンバーなどが着用して宣伝し、全国に35万人ともいわれるEXILEファンがこぞって購入しています」(芸能プロダクションマネージャー)

 では、実際にEXILEのビジネスモデルと市場価値はどれほどのものなのか? エンタテインメント業界で先を進むジャニーズ事務所と比較しつつ、芸能プロダクションの経営に詳しい会計士と共に検証してみよう。

ジャニーズとLDH ビジネススキームの違い

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EXILE TRIBEのメンバーは誰一人知らなくても、こいつだけは知ってる! という人も多い関口メンディーさん。MCハマーを彷彿とさせるが、彼のファンは知っているのだろうか……。

 まずは、現在の1年間の売り上げ高を比較すると、ジャニーズ事務所の売り上げ高は600~700億円(本誌推定)であり、一方LDHの売り上げ高は180億円(13年3月期)と4分の1程度だ。

「ジャニーズは、経営に関する情報は完全非公開。この数字は各種売り上げをもとに厳しめに試算したものですが、最近の嵐の人気ぶりをみれば、売り上げ高1000億円もありうるでしょう。というのも、例えば、音楽印税収入(楽曲やカラオケの売り上げ)は、アーティストの事務所とレコード会社が売り上げを分け合う形になっており、多数のアーティストを抱えるレコード会社のエイベックスの売り上げ高が、1400億円前後。嵐は、音楽印税収入だけで見ても13年のオリコン年間ランキング『アーティスト別トータルセールス部門』において、141・9億円で1位。しかもジャニーズが経営するレコード会社であるJ Stormに在籍しており、音楽印税収入が折半されずに入ってくるので、大幅にアップしているはずです。一方のEXILEは、エイベックスに所属しているために、LDHに音楽印税収入は思ったほど入らない」(公認会計士)

 このように、LDHとジャニーズを経営面で比較する上では、ビジネスモデルの違いに注意する必要がある。

「ジャニーズ商法は昔ながらの芸能プロダクション的なビジネスモデルで、主な収入源はテレビ・映画などの出演料収入、興行収入、そしてファンクラブ収入。Jr時代から先輩のバックダンサーなどに起用し、デビュー前からテレビなどのメディアに露出させて人気を集め、ファンを増加させる。そこで一定程度ファンが集まれば、CDデビューをさせ、個別のファンクラブを発足。そしてコンサート開催では、グッズも売れる。その後も、メンバー各々の個性を引き立たせ、舞台や映画の俳優、テレビの司会などメンバーそれぞれをスターとして売り出し、さらにファンを獲得……という循環で利益を生み出します。これが成功すると嵐のようにファンクラブ会員数が160万人にもなり、ドームツアーをやっても入れないファンが出てくるほどになる」(前出・芸能記者)

 タレントの圧倒的な個性を育てて商売にするジャニーズ商法は、あらゆる面でスターであることが要求される。例えば音楽の分野だと、ビクターにSMAP、エイベックスにV6、タッキー&翼、Kis-My-Ft2を在籍させているが、これは、各レコード会社に所属タレントを配置することで、各社のリリース情報を先取りし、「初登場1位」商法を盤石なものとしているのだ。

 一方のEXILE擁するLDH商法は、音楽業界的ビジネスモデルだ。主な収入源は興行収入、グッズ販売であり、興行を重ねることで、利益を生み出す仕組みだ。

「ライブでは一時的にせよ大きな興行収入が入ってきます。例えば、HIROが参考にしていると思われるエイベックスでも、とある3カ月間の売り上げ高はライブでは約125億円にもなりますが、その多くが会場設営費などの経費として消えてしまい、利益として残るのは約10億円、利益率は8%程度です。一方、会場で販売するグッズの売り上げは約46億円ながらも、利益は約18億円と利益率は40%。ライブを重ねて、売り上げ高を伸ばし、グッズ販売で利益を増やすというビジネスモデルなのです」(前出・公認会計士)

 LDH商法では、EXILEのほか三代目J Soul Brothers、E-girlsなどがエイベックスのレーベルRhythm zoneに所属。CD不況とされるなか、13年には「EXILE PRIDE~こんな世界を愛するため~」が101・1万枚で初のシングルミリオンを記録し、オリコン年間ランキング「シングルセールス部門」で5位と、4位までの上位を独占したAKB48に迫る勢いを見せている。一部で、「ライブチケットにおまけでCDを付けた」売り方が男版AKB商法と揶揄されたが、現代の音楽ビジネスでは当たり前の戦略をプライドに関わることなく、したたかに展開。100万人規模のライブツアーで利幅の大きいグッズを販売し、各会場ごとにデザインの異なるシャツを販売するなど徹底している。

 つまり、LDH商法はライブをし続けている限り、売り上げ高が伸び、利益も大きくなるが、いったんライブをやめれば経営がいつ破たんしてしまうとも限らない、永久に泳ぎ続けないと死んでしまうマグロのような回遊魚商法になっているのだ。そして一度、この“回遊魚”商法が限界を見せた瞬間があった。11年3月11日の東日本大震災だ。

“EXILE”ブランドを効率的にカネにする

「自粛と節電ムードで軒並みライブは中止、縮小を余儀なくされました。大手芸能プロダクションも軒並み売り上げ減でしたが、その影響は、LDH商法に大きな課題を突きつけたのです。というのも、10年のツアーでは110万人を動員して、売り上げ高は200億円目前に迫りましたが、11年のツアーでは60万人しか動員できず、売り上げ高は160億円と20%減収にダウンしてしまったのです。最終的な当期純利益はほぼ前年比水準でしたが、今のビジネスモデルでは毎年、ライブに100万人を動員し続けないと維持できない。さらに売り上げを伸ばすためには、より多くのライブをこなさなくてはいけないという事実が突きつけられたことになります」(公認会計士)

 このためか、11年以降、LDHは、EXILEメンバーのテレビ出演を活発化させ、女性ユニットE-girlsもスタート。アパレル「24karats」の積極展開といった多角化路線に乗り出す。そして13年、HIROはパフォーマー引退を表明し、経営に専念という選択をすることになったのだ。

「LDHと同様に深刻化するCD不況と音楽業界的ビジネスモデルに危機感を持っていたエイベックスは、映像配信事業に乗り出し大成功。いまや、映像配信事業はエイベックスの利益の半分を占めるほどです。一方で、LDHは粗利益の高いアパレル業界に乗り出したのです。EXILEの象徴でもある、ヤンキー風ファッションを押し出した同社のアパレルは、先々に、EXILEの持つタレント性を生かしていくでしょう」(経済誌記者)

 要するに “EXILE”というブランドを効率的にカネにしていこうというわけか。

すでに危惧されるEXILEの賞味期限

 ただし、現在のところ方向転換は成功しておらず、興行収入頼みという構図はまったく変わっていないようだ。

「興行には、常に“新しさ”が求められますから、新しい人材を発掘し続けて活性化を図らないと飽きられる。なのでEXILEは、全国規模のオーディション(EXILE・パフォーマー・バトル・オーディション、ボーカル・バトル・オーディション)を定期的に展開し、各地域の逸材を発掘しています。また、ダンススクールも安定収入が見込める上に、人材を発掘するツールになりうるのです。ただし、ダンススクールはエイベックスが日本ストリートダンス協会を立ち上げたために、先手を打たれています。競合状態で成長軌道が見えにくい」(前出・大手芸能プロダクションマネージャー)

 LDHはTBSの深夜番組『週刊EXILE』を利用した公開オーディションで、新しい人材を発掘していく。この点はジャニーズ事務所の徹底した非公開主義のメンバー採用と真逆をいくもの。また、選抜・育成方法も対照的だ。

「それぞれが輝く“個性”を発掘する目的のオーディションなのですが、LDHのオーディションは『EXILE TRIBE』という集合体の中で必要な“個性”を選んでいるにすぎない。このため、この“個性”はメディアや時代が求める個性とは必ずしも一致しない。

 一方で、ジャニーズは純粋にその時代が求める“個性”を選んで世の中に出していく。例えば、“ヤンキー”が求められる時代になれば“神奈川地元愛のヤンキー”キャラの中居正広を、ドラマ『味いちもんめ』(テレビ朝日)に出演させるなどする。95年の放映当時はまだ、ヤンキー=板前というイメージもありましたから。ジャニー喜多川の才覚によるわけですが、メディアもファンもジャニーズのタレントを受け入れやすい。

 LDHも、時代に求められる個性を育てる仕組みに転換しないと、現状のEXILEのように、“危ないヤンキーでありながら、みんな仲良し”という矛盾を抱え、その枠組からはみ出るような強烈な個性が生み出せていない」(テレビ局関係者)

 テレビを使ったタレント育成はジャニーズ商法の基本中の基本。もともと日本のテレビ文化をリードしてきた渡辺プロダクションにかつて、ジャニー喜多川が出入りしていたことがあり、同事務所と提携していた時期もあったように、ジャニーズはテレビの力を最大限に利用してきた。現在、SMAP、嵐、関ジャニ∞を中心に冠番組も多数あり、そのほか司会やレギュラー番組を合わせたらテレビでジャニーズを見ない日はない。

「数字が取れるジャニーズは大手のテレビ幹部でさえ、なかなか頭が上がる人物が少なく、多少強引なキャスティングも可能にしてきました。最近ではSMAPの飯島三智マネージャー肝いりのKis-My-Ft2を中居正広との抱き合わせでテレビ出演させることで、気がつけば彼らも人気グループにしてしまったほどです」(芸能記者)

 一方、LDHも手をこまねいてるわけではない。

「パフォーマーの高齢化が進み、ダンス以外にも売りをと、テレビや芝居業へ積極的に進出している。LDHは劇団EXILEの設立や、育成スクールのEXPGに演技コースを設けるなど芝居のできるタレントを売り出そうとしている。

 社長のHIROは、広告代理店やテレビ局関係者への接待も頻繁に行なっていて、メンバーも足を運ぶそうです。しかし歌とダンスにこだわってきただけに、しゃべりがうまいわけでもなく、役者も大根ばかりですが……」(映画関係者)

 確かにここのところ、日本テレビの朝のワイドショー『ZIP!』にMAKIDAI(火曜日のみ)、フジテレビの昼バラエティ『バイキング』火曜MCにTAKAHIRO、NAOTOが交互出演するなどお茶の間に進出中。しかし、これまでも、『EXILE魂』(TBS日曜夜10時)、『ひるザイル』(日本テレビ 日曜12時45分~)とEXILEを冠につけた番組はことごとく打ち切りに。「EXILEだけでは、ドラマの数字がとれない」(テレビ局関係者)という厳しい声も多い。さらにこんな声も。

「EXILEのメンバーたちにインタビューをしても、二言目には『HIROさんが~』『HIROさんを尊敬してます』ばかりで、全然面白い話ができない。しかも原稿チェックでは、事務所がEXILEというブランドを壊さないように厳重に管理しているのか、ものすごく細かく修正を入れてくる。個性なんて出てくるわけがないですよ(苦笑)」(雑誌ライター)

 このままではLDH商法は限界を迎えるというのは関係者の揃った見方だ。

「現在のLDHは、過渡期にある。コレまでは、“神奈川地元愛のヤンキー”キャラHIROが女優・上戸彩を妻に経営者として成り上がる、サクセスストーリーでした。 メンバーはHIROを絶対視して支えるHIRO教信者のようなもの。EXILEらしい、メンバーという信者を大量生産することで、ライブ動員や興行収入を増やすビジネスサイクルでしたが、限界に来たのであわてて方針転換をしているところです。これから経営者としてのHIROの真価が問われることになる」(前出・大手芸能プロダクションマネージャー)

 その試金石になるかもしれないのが、三代目J SOUL BROTHERSの登坂広臣が能年玲奈の相手役を務める今夏公開予定の映画『ホットロード』だろう。これだけの話題作に、うまく所属タレントをブッキングできたのは、現在のEXILEの実績と、HIROの手腕も大きいだろう。三代目J SOUL BROTHERSなどの人気が高まる中で、経営方針の転換を進め、ジャニーズに継ぐ巨大帝国を創り上げることができるのだろうか?

(文/松井克明)

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