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宇野常寛の批評のブルーオーシャン 第50回

AKB48握手会襲撃事件を考える

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──既得権益がはびこり、レッドオーシャンが広がる批評界よ、さようなら!ジェノサイズの後にひらける、新世界がここにある!

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『AKB48海外旅行日記3 ~ハワイはハワイ~』

 去る5月、岩手県で行われたAKB48の全国握手会で、ファンを装った20代の男性が握手の列に並び、服の中に忍ばせていた刃物でメンバー達に斬りつけるという凶行に及んだ。メンバー2名と警備員1名が負傷し、逮捕された男性は「人のたくさん集まるところで人を殺したかった」「別にAKB48のファンではない」と供述している。これらの供述を受け取る限り、犯人はいわゆる地方で最も人とメディアの注目が集まるイベントの一つであるAKB48の握手会で、それもメンバーを殺害することで注目を集めようとしたようだ(これはかつての秋葉原連続殺傷事件を強く想起させる)。

 要するに、犯人は「盛り場」の一つとしてAKB48の全国握手会の会場を選んだのだが、出版・マスコミ各社のうち多くのメディアが、こうした犯人の供述を無視して、AKB商法や握手会システム自体が犯行を誘発したと主張している。もちろん、犯人がこう言っている以上、(嘘をついていなければ)「AKBが犯罪を生んだ」なんてストーリーは論理的に考えてあり得ない。しかし多くのテレビ番組や、新聞、週刊誌、ウェブメディアなどがこうした犯人の供述を無視して、あるいは犯人の供述が何もない状態で憶測と決めつけを持って、「AKBが犯罪を生んだ」という物語をねつ造して流布した。その中には、残念ながら本誌の関連するウェブメディアも含まれている。

 AKBに限らず、若者向けのサブカルチャー、それも歴史の浅い新興勢力は年長世代に限らず、同じ若者世代にも白い目で見られがちであり、卑しいメディアはこうしたものを生け贄にいじめの快楽を提供することで耳目を集めるのは世の常だ。僕は事件の第一報を受けて、すぐにこうなることを予感してこうツイートした。「先に言っておくけれどここぞとばかりにオタク批判、アイドル批判、AKB運営批判、アイドルファン批判がはじまるはず。今のツイッターはそういう文化が根付いてしまったので、あまり興味もない人がイジメの快楽をカジュアルに得るためにこの事件を利用するのだと思う。」

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2016年12月号