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【premium限定連載】出版界ホンネとウソとウラ話 第9裏話

ポイントサービスで出荷停止Amazonに楯つく小零細版元――無関心の大手出版社らは再販制を放棄?

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『Amazon超活用術!』(洋泉社)

 いまや買い物をすれば、嫌と言っても付与されてしまうポイント。このサービスが実は景品ではなく、値引き行為であると知っている人は少ないのではないだろうか。実はこのポイントサービスを巡って、出版業界では“大事件”が起こっている。

 5月9日、小零細出版社3社(緑風出版、水声社、晩成書房)が記者会見を開き、日本で最も本を売っているアマゾンジャパンへの自社出版物の出荷を停止したと発表した。その理由が、アマゾンジャパンが2012年8月から始めた学生を対象としたサービス「Amazon Student」が再販契約に違反する値引きを行っているからだという。3社はアマゾンジャパン(厳密にはアマゾンインターナショナルセールスインク)に出版物を供給する取次会社・日本出版販売と大阪屋を通じて同サービスから自社商品を除外してほしいと要求してきたが、アマゾンジャパンは「契約当事者ではないので回答する義務はない」と突っぱね続けた。そこで、最終手段として商品の出荷停止を断行したのだ。

 出版業界外の人にとっては、事態をよく飲み込めないだろう。何故、紀伊國屋書店やジュンク堂書店、TSUTAYA、楽天ブックスといった多くのリアル&ネット書店がポイントサービスを行っているにも関わらず、アマゾンジャパンだけが目の敵のようにされているのだろうか。それには出版界特有のワケがある。

 まず、出版界、つまり本(書籍も雑誌)は出版社(メーカー)が定めた価格(定価)で書店(小売店)は販売しなくてはいけない。これを再販制度と呼んでいる。しかし、これは通常、再販行為として独占禁止法で違反とされているのだが、新聞や出版物、音楽CDなどに限ってはこれを許されている。よく、価格のことを定価と言う人がいるが、定価と表示できるのは新聞や出版物に限られているのだ。

 この制度の下、出版社と取次、取次と書店は各々で再販売価格維持契約書なるものを結ぶ。そこにははっきりと「定価を厳守し、割引に類する行為をしない」「この契約書を結ばない書店には本を卸してはいけない」などと書かれている。それらに違反した場合は違約金の請求や一時的な取引停止措置を講ずることができるとも記されている。

 そして、ポイントサービスだが、先に触れたように値引き行為にあたると公正取引委員会は明言している。厳密に再販制度を運用するのであれば、書店はポイントサービスを行えないことになる。しかし、公取委は「1%とかこれに近似のポイントを再販契約のもとで出版社が止めさせるのは一般消費者の利益を不当に害する」と出版社にクギを刺した。これを受けて、出版界は数パーセントのポイントサービスは読者サービスとして容認する流れとなった。この数パーセントは2~3%と理解されている。

 そこで、今回出荷を停止した3社の話に戻る。アマゾンジャパンの「Amazon Student」は学生が本を購入したら、10%のポイントを還元するというサービスなのだ。1割引で本を売ることに等しい。「2~3%ならまだ知らず、10%とは何事か。再販制度を崩壊させるのか」と噛みついたのが、先の3社が加盟する日本出版者協議会(出版協)という中小・零細出版社の団体だ。ここがすごいのは「10%のポイント還元は中止せよ」と申し入れたところにある。当然、団体が一企業へ圧力をかけることは禁止されている。公取委からカルテル行為にあたるとお叱りを受けたようだ。

 これに対して、アマゾンジャパンは「回答する立場にない」(契約当事者は取次であり、出版社ではないため)と突っぱね、出版物を供給する日販(取次)も「協議し議論した」「問題の解決は難しい」と要を得ない回答だったという。その後は、同団体に所属する各社がアマゾンジャパンに対し同サービスから自社商品の除外を要請するように戦術を転換。しかし、アマゾンジャパンは要請に応じなかったため、再販契約書に基づいて一時的な出荷停止の措置を取った。


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