サイゾーpremium  > 特集  > タブー  > 修正の裏事情がわかる!? 【陰謀写真】ファイル

――政治系、軍事・宇宙系、商業系、社会系と4つのジャンルに分けながら、さまざまな陰謀をめぐるイメージを佐藤健寿氏に解説してもらった。

国家プロジェクトで写真を加工!――印象を操る政治系

――悪名高い独裁者のみならず、偉業で知られるあの政治家も改ざんした写真を利用していた!?

【ファイル1】写真から政敵を抹殺した独裁者たち

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【1】大量粛正に関与したニコライ・エジョフは後にスターリンに消された。【2】レーニン死後にスターリンと反目したトロツキーも消えた。【3】毛沢東に反目した青年が消された写真。【4】隣のゲッべルスをヒトラーは消したが、理由は不明。【5】ムッソリーニは、よりカッコよく見せるために馬使いを消した。

 プロパガンダ・ポスターに象徴される共産主義国の人心掌握術は、現在もさまざまな研究がなされている。とりわけ膨大な国民を抱える旧ソ連や中国においては、言葉よりも確実に万人に伝わりやすい「写真」は積極的に政治に利用された。なかでも有名な写真の改ざん利用は、旧ソ連のスターリンの時代にもっとも盛んに行われた。ロシア史上最悪とされたその時代、絶対的な独裁体制を敷いたスターリンは、レーニン死後、政敵となったトロツキーやニコライ・エジョフらの姿をあらゆる写真から消した。それはトロツキーという邪魔な存在を政治的に抹殺するだけでなく、歴史そのものを作り替えるという国家事業としての写真編集であった。

 同様の修正は毛沢東も行っているが、彼の場合は青年時代の写真から政敵を消すだけでなく、政権掌握後、中国全土に配布したあの有名な肖像画も、現代のアイドルさながらさまざまな美肌修正や歯の美白作業が行われていたことが、撮影したカメラマンの証言で明らかになっている。また、旧ソ連の宣伝手法に影響を受けたナチスドイツの宣伝相ゲッベルスは、現代的な写真や映像の政治的応用の技法を確立した第一人者といってよい。特にレニ・リーフェンシュタールを監督に起用して生まれたナチス党大会の映画『意志の勝利』では、ヒトラーのカリスマ性を最大限に高めるべくさまざまな演出が行われ、狂乱の国家的暴走を生んだ起爆剤としての「リアリティ」を作り出すことに成功した。

【ファイル2】首だけを合成したリンカーンの肖像写真

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【6】有名なリンカーンのイメージは、異なる政治家のポートレイトに顔を継ぎ足したものである。

 北朝鮮の金正日は晩年、健在ぶりを示すために国内各地を視察する様子を写真で発表し、その画像は世界中で人気となった。それは彼があまりにも元気だったからではなく、あまりにも出来の悪いコラージュだったからである。広い野原にパースペクティブの狂った切り抜きの金正日が立ちすくみ、笑顔で手を振るその写真は、もはや前衛アートのようであった。しかし、政治における写真とは、古くはローマ帝国王の代々の肖像画のごとく、当時や後世の印象的評価を決定する重要な政治的道具となる。そのことを誰より理解し、世界最古ともいわれる写真編集を行ったのは、アメリカ合衆国大統領のエイブラハム・リンカーンであった。今日リンカーンといえば必ず想起される凛とした立ち姿の肖像写真、それは陸軍長官から副大統領となったジョン・カルフーンの立ち姿に、首だけを合成したものだったのだ。極めて即物的なコラージュによって生まれた、自由・平等主義を標榜する強い大統領のイメージ。それは陰謀論大国アメリカにふさわしい、歴史的なアイコンの誕生だったといえる。

【ファイル3】機体の“謎の影”をとらえた9・11写真

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【7】左下が突入したボーイング、右下が通常のボーイング。

 アメリカの新聞が行ったある調査によれば、アメリカ人の40%以上が9・11事件について「アメリカ政府は何かを隠している」と疑っているという。今やケネディ暗殺に次ぐ国家的陰謀論の中心にある9・11。ハイジャックされた4機目の飛行機(通称United93)の撃墜疑惑や、さらには貿易センタービルの崩落の様子から「あらかじめビルに爆弾が仕掛けられていた」とする説など、アメリカ政府の説明を疑う声はアメリカ内外で根強いのだ。その中でももっとも話題となったのが、2機目のボーイング突入時の写真である。この写真はニューヨーク在住の写真家、ロブ・ハワード氏が撮影したもので、飛行機がビルまでわずか数十メートルに迫る緊迫の瞬間がモノクロで映し出されている。しかし、後に、飛行機の機体下部に通常のボーイングには搭載されていない謎の「円筒形物体」の影が認められ、あらかじめ政府によって仕込まれたミサイルか爆弾ではないかという推測を生んだのである。

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