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第1特集
1兆円市場目前ネット広告最前線!【1】

費用対効果のみを追求するネット広告営業マンが苦しむ青息吐息な現実

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――世の中で運営されているネットメディアを支えているのはなんといっても広告費。いま広告業界で一番人気のサイトはどこなのか?そのお値段と効果の高さを調査したところ、ネット広告が抱える問題点までもが浮かび上がってきた。

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あいつもこいつも狙ってる!?Yahoo!広告解説図

 電通が発表した「2013年 日本の広告費」によると、昨年の総広告費は5兆9762億円。前年比で1・4%の伸びを示し、2年連続で前年実績を上回った。中でも目覚ましく伸びているのがインターネット広告費。金額にして9381億円、対前年比伸び率は8・1%に達する。2009年にマスコミ四媒体の一角である新聞の広告費を追い抜いて以来(同データ)、インターネット広告費は右肩上がりで上昇。1兆7913億円にも上るテレビ広告費には大きく水をあけられているが、その距離は確実に縮まりつつある。

 ……というおおまかな現状はともかく、インターネット広告の世界でどれほどの金額がどのような形で動いているのか、特定クライアントへのディスカウントや価格競争はあるのか、さらにはどのような広告手法があるのかといった具体的な話は、部外者の耳にほとんど入ってこない。ウェブページを開けば頼みもしないのに「あなたが欲しがっている商品」の広告が目に飛び込んでくる状況は消費者からすれば便利だが、素直に喜んでいていいものか? もしかしたら見えざるインターネット広告の網の目に、我々の生活はどっぷりと絡め取られているのかもしれない。そんな気持ち悪さを払拭するために、本企画ではインターネット広告の最前線で働いている総合代理店と専業代理店の社員に話を聞きながら、インターネットメディアと広告の関係に光を当ててみるとしよう。

 まず話題に上ったのは、最も広告費の高いサイトについて。そう、多くの人が想像する通り、ヤフージャパンのトップページがそれに該当する。右上に表示される「ブランドパネル」という四角い広告枠だ。日本有数のPVを誇るポータルサイトで最も目にする機会の多い枠だから、金額は相当なものだと推測できる。

「1週間単位で販売される枠で、価格はインプレッション(広告の露出回数。サイトの訪問者が1回表示させたら1インプレッションとカウントする)の数によります。5000万インプレッションなら2500万円くらい。それだと結構高いので、1000万インプレッションで1000万円みたいな売り方もある。インプレッションが多くなればなるほど単価は安くなる形ですね」(大手総合代理店の営業担当・A氏)

 トップページ「ブランドパネル」で1週間に約10~20社くらいの広告が入る。毎週3億円程の売り上げがあると考えられるそうだ。業界一のプレミアム枠だけあって、ここに出稿できるのは自動車会社のようなナショナルクライアントがほとんど。初めて枠を買うような企業なら、「3000万インプレッションで2800万円はする」(同)というから、かなり敷居が高い。ちなみにメディアジャック(広告主が個別媒体の広告枠を買い占めること)となると、3000~3500万円の広告費+クリエイティブの制作費とのこと。こんな状況だから当然、ディスカウントもない。ただ、トップ以下の中身ページになると各種ターゲティング広告が導入され、デモグラフィック(年齢、性別、エリアなどの属性データ)や行動ターゲティング(サイト内でのユーザの行動を分析する)のかけ方によって料金はかなり変わってくる。

「セグメント(ユーザーを、年齢、職業、居住地など、抽出したい特定の条件によってグループ分けすること)しなければ1インプレッション0・1円くらい。セグメントをかけていくと、それが0・36~0・52円ほどになります」(同)

 セグメントしたほうが料金が高くなるのは、もちろん効果が高いはずだから、というのが表向きの理由。だが、「実はバナー枠を処理しやすいという理由もある。サイトの深いところまで見るユーザーは少ないが、行動ターゲティングを持ち出せば、広告枠を売りやすくなるから」と、インターネット専業代理店の営業担当B氏は内情を明かす。興味深いことに、業界内にはターゲティング広告そのものを疑問視する向きもあるという。「ターゲットを絞るほど広告単価が高くなると、CTR(クリックスルー率。広告がクリックされた回数を、広告が表示された回数で割ったもの)が上がらないとペイできない。それなら割高でもたくさんの人に見られるトップページの広告のほうがいいという考え方もある」(A氏)というわけだ。

 では、PCをしのぐ勢いで販売台数を伸ばしているモバイル系端末向けのインターネット広告はどうなっているのだろう? すぐに思いつくのはLINEのフリースタンプと企業アカウント、それにフェイスブックの広告。中でもLINEの広告料金の高さは業界内でも随一だ。スポンサードスタンプは公式アカウント連動型の場合、16種類で2500万円。8種類で2000万円。こんなに高いのに、「1週間に3枠しかないので、すぐに売り切れる」(同)という。ヤフージャパンのブランドパネル同様、スポンサードスタンプにもディスカウントはない。一方で、LINEそのものを懸念する声もある。前出のB氏は、「高額さゆえに効果が見えないとなれば、企業も手を引くのが早い。第二のミクシィになる予感がする」と否定的だ。

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