サイゾーpremium  > 特集2  > 【PL、創価学会】……宝塚100年を支えた宗教裏面史
第2特集
宝塚歌劇団【裏】100年史【7】

PL、創価、法華経系新宗教……宝塚100年の精神を支えた"信仰"

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――浮世離れした華やかな世界でありながら、同時に俗世と同じく出世競争や規則との戦いが存在する、宝塚歌劇団という世界。この世界を100年存続させてきた裏側には、宗教的精神性が拭いがたく存在する。宝塚研究も行う気鋭の宗教学者が、タカラジェンヌたちの言葉からその世界を読み解く。

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『宝塚おとめ 2014年度版』(阪急コミュニケーションズ)

「宝塚歌劇団ほど、お墓参りをする団体はない」と言われることがある。まず宝塚音楽学校に入学すると、宝塚歌劇団の創設者・小林一三のお墓参りがカリキュラムに組み込まれている。時代物である『美しき生涯』の主人公・石田三成など、演目の登場人物のお墓参りも可能な限り行われる。また、舞台の初日には必ずお祓いを受けるなど、実は宝塚では宗教的な行事がとても重視されているのだ。本稿では、宝塚歌劇団と宗教の関わりを、元タカラジェンヌたちの発言から考えてみたい。

 90年代に月組のトップスターとして人気を誇り、現在も芸能界で活躍する天海祐希は、全国の神社を包括する神社本庁と、神社本庁が本宗とする伊勢神宮の事務を司る神宮司庁が編集した『むすひ』(平成15年版)という冊子の中でこう語っている。

「私は東京の下町に育ったので、神社は生活に密接しているんです。(中略)今でも実家に帰ると神棚と仏壇に手を合わせます。宝塚の時は初日に代表者が舞台の無事を祈ってお祓いを受けるんです。公演ごとに『無事に舞台が終わりますように』ってお祈りします。すると何か舞台の神様に守っていただけるような気がして。(中略)日本に住んでいる成人としての責任もあると思うんです。その一つが、神社仏閣は大事にしていかなきゃいけないってこと。必ず人の心の中にそういうものをあがめる心っていうのは残りますからね。それは心のよりどころではないでしょうか」

 異例の速さでトップスターへと駆け上がった彼女自身の宗教観のみならず、歌劇団の宗教行事の様子も垣間見える談話である。一方、天海の約10年前に月組トップスターを務めた大地真央も、やはり何か目に見えない存在に守られる体験をしているという。それは退団後の97年、声帯炎を患い、舞台『クレオパトラ』の公演を休演にしたときのことだった。

「キリスト教の教えに、『神様は、その人に乗り越えられない試練は決してお与えにならない』というものがあるそうです。私は宗教とは無関係ですが、過去を振り返ってみれば、まさにこの言葉どおりだとおもいます。(中略)医学的には『ほとんど絶望的』にみられていた声帯の炎症が、わずか一週間で治ってしまったというのも、お医者様にいわせれば『まさに奇跡』だったそうです。私のなかに『治りたい、治すんだ』という強烈な思いがあり、それが自己治癒能力を高めてくれたのでしょうか。ファンの方の“治ってほしい”という祈りや思いが奇跡をおこしたのでしょうか。運が強いといってしまえば、そうなのかもしれません。ただ、不安と悲しみでまんじりともできない夜を過ごしながらも、あのときの私は何か不思議な力に守られていたような気がしてなりません。『さあ、行きなさい。お前には、まだやることがたくさんある』そんなふうに優しく背中を押してくれる“何か”の存在を、私は感じていたのです」(大地真央『私ね…。大地真央』マガジンハウス)

 大地は退団後も舞台の世界で活動し、日本のミュージカル界を牽引する女優となっている。彼女のこの不思議な病気治癒という奇跡がなければ、日本のミュージカルの歴史は変わっていたと言っても過言ではないかもしれない。

 一方、その大地の相手娘役であった黒木瞳は、85年に大地と同時退団後、なかなか仕事がうまくいかない時期があった。その時に、宗教団体に入信してみたことを告白している。

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