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佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第71回

チャットとゲームだけでない LINEが次に挑戦する"アプリのプラットフォーム"

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

 スタンプのオープン化が話題のLINEだが、それと同タイミングで発表された新サービスが、実は日本のアプリマーケットにおいて大きな意味を持つことになりそうだ。今回はその「LINEビジネスコネクト」の真価を見てみたい。

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『できるポケット LINE 公式ガイド スマートに使いこなす基本&活用ワザ 100』

 LINEが、「LINEビジネスコネクト」という新しいサービスを発表した。この新サービスの意味はあまり広く理解されていないように思えるが、実は非常に画期的な意義を持っている。

 まず、このサービスがどういうものかを説明しなければならない。LINEの公式プレスリリースには、以下のように記されている。

「LINEビジネスコネクトは公式アカウントの各種機能を企業向けにAPIで提供し、各企業がカスタマイズして活用できるサービスです。LINEビジネスコネクトを活用することにより、従来の企業公式アカウントのような、LINEユーザーへの一方通行のメッセージ配信だけでなく、特定のユーザーに対してより最適化されたメッセージを送り分けることができるようになります」

「さらに、ユーザーの同意のもと、企業の持つ既存のデータベースや、自社システムとLINEアカウントを連携させることで、メッセージ配信ツールとしての域を超え、顧客管理ツールや、業務ソリューションツールとしての利用も可能になります」

 これだけではなんのことかよくわからない人が多いと思うが、リリースでは具体的なケースとしてこんなものが挙げられている。例えば、LINE上のピザ宅配店の公式アカウントにピザを食べているスタンプを送るだけで、登録された自分の住所にピザが宅配されてくる。DVDレンタル店でDVDを借りると、返却日の前の日に「明日は返却日ですよ~」と同店の公式アカウントからメッセージが送られてくる。タクシー会社のアカウントに「タクシー呼んで」のスタンプを送ると、スマホのGPSの位置情報を使って、すぐにタクシーが手配される。

 もちろん、こうしたサービスが画期的というわけではない。スマホからピザを頼んだりタクシーを頼んだりするのは、今までだって可能だった。日本交通などが提供しているタクシー配車アプリは、もはや都市生活の定番だし、最近はアメリカからUberというワンランク上のタクシーを提供するアプリが日本上陸して話題になっている。DVDの返却日を教えてくれるなんていうのは、わざわざアプリを使わなくても、メールで十分に可能だ。宅配ピザの注文をスタンプ送信で、というのも同じ。スタンプを使うのが新しいやり方で面白いが、注文自体は従来からアプリでできた。

 ではこれをLINEでやると、なぜ画期的になるのか。

 それは、企業やサービスとユーザーの間の双方向のやりとりを、LINEに一元化するというプラットフォームの可能性を見せているからだ。つまり、これまで各種アプリやメールなどに分散されていたコミュニケーションを、LINEという共通プラットフォーム上で実現してしまうということである。これこそがLINEビジネスコネクトの狙いなのだ。

 企業サービスとのコミュニケーションを共通プラットフォーム化すれば、さまざまなアプリを使い分ける必要はなくなる。ユーザー側から見れば、スマホの通知表示をすっきりさせることができる。タクシーを呼ぶ時にはタクシーの配車アプリ、ピザを頼む時はピザのアプリ、DVDの返却にはDVD店のアプリなどとサービスごとにアプリを使い分けていると、ネットが生活分野に浸透していくのに従って、際限なくアプリの数は増えていってしまうことになる。スマホの画面は有限だし、何十個ものアイコンがずらずらとスマホの画面に収まり、いちいち画面を切り替えないとアプリを探せないというのは、かなり不便な世界だ。

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