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インタビュー
「バンドマン人生」を歩んでいく男の覚悟

【ザ・ビートモーターズ】地下アイドルならぬ地下バンドマンが捉える「夢を追う」ギリギリの現状

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――このほど3rdアルバムをドロップするザ・ビートモーターズ。バンドとしてなかなか芽が出ない現状の中で、「夢追う」崖っぷちの年齢となった今を、どう捉えるのか?

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(写真/有高唯之)

「CDが売れない」と言われ続け、アイドルブームがシーンを席巻する昨今。様変わりする音楽業界で、それでも全国各地のライヴハウスでは、今も変わらず汗まみれになるようなバンドマンのパフォーマンスが繰り広げられている。テレビや大手メディアには取り上げられなくとも、現場の熱気でファンをつかみ、タフな環境でも着実にサヴァイブしているバンドがたくさんいる。いわば「地下アイドル」ならぬ「地下バンドマン」。通算3枚目のアルバム『3』をリリースしたザ・ビートモーターズもそんな4人組だ。60~70年代のロックを彷彿とさせるストレートなサウンド、ボーカル秋葉の芯の太い歌声を武器に、豪快なライブパフォーマンスを繰り広げてきた。

「天井に頭をぶつけて失神したこともあったよね」(ジョニー)

「ノリノリになって、思いっきりジャンプしたらそこに天井があって。頭から流血しました」(秋葉)

 デビューは2009年のこと。オーディションを経て奥田民生などが所属するソニー・ミュージックアーティスツと契約し、サマーソニックやロック・イン・ジャパンなどの大型フェスにも出演。徐々に注目を集めていく。

「あの頃は、どんどん環境が変わって、自分たちもいい感じになるんじゃないかと思ってました」(ジョニー)

 そして11年には満を持して1stフルアルバムをリリース。しかしその頃から風向きが怪しくなり始める。音源のセールスやライブ動員は思ったほど伸びず、横ばい状態。一気にブレイクするには至らず、それでもメンバー4人はマイペースにバンドを続けてきた。

「バンドのあり方やビジョンとかは考えてなくて。こういう音楽をやりたい、こういう作品を作りたいというので突っ走ってきたという感じでしたね」(秋葉)

 デビュー当初にロックフェスでステージに立った経験を、彼らはこんなふうに振り返る。

「当時のことを思い返すと、その時々は一生懸命やってたとは思うけど、やり方が違ったところはあったかもしれない」(秋葉)

「僕らが想像以上に気負ってたというのもありますね。お客はフェスという祭りを楽しみに来てるのに、そこに真っ正面から戦いにいっちゃったという」(鹿野)

「俺たち格好いいんだから見にこいよ! みたいに思ってたんですよね。でもそれはレジャー化した今のフェスに“ウッドストック世代”が入り込んだみたいな感覚だったのかも」(ジョニー)

 12年に2ndアルバムをリリースして以降、作品のリリースは途絶え、表立った活動は少なくなる。しかしその間、バンドはじっくりとライブの地力を鍛えてきた。

「とにかくライブをやってきましたね。ライブならではの瞬間ってあるんですよ。言葉にならない気持ちよさがある」(ジョニー)

 大学のサークルで出会った4人は、いまや30代に突入した。世間的にはもはや「夢を追う」には崖っぷちの年齢に思えるかもしれない。しかし最近は、デビュー“最遅”で武道館公演を実現させた怒髪天や、再ブレイクを果たしたフラワーカンパニーズなど、キャリアを重ねた先に成功を勝ち取るバンドも増えてきている。

「それでも『続けるのってすごいよね』って、気楽に言わないでほしいんですよ。続けていくことで咲く花があるのはわかってるんですけど、花は早いうちに咲きたいものなんですから!」(ジョニー)

 この先音楽業界がどうなるか、見通しはわからない。しかし少なくとも4人が「バンドマン人生」を歩んでいく覚悟は固そうだ。

「大学卒業して、いろいろあって。もう戻れないって気がしてますね。個人的には野垂れ死んでもいいって思ってるくらいで」(鹿野)

「でも結局、楽しいからやってるんで」(木村)

「バカなんですよ。その一言に尽きる(笑)。生き甲斐を感じてるし、天職だと思ってます」(秋葉)

(文/柴那典)

ザ・ビートモーターズ
秋葉正志(Vo、G)、木村哲朗(G)、ジョニー柳川(B)鹿野隆広(Dr)からなるロックバンド。秋葉、木村、柳川が明治大学の軽音楽サークルで出会い結成。04年冬、ドラムの鹿野が加入して現在のバンドメンバーとなる。 09年初頭MySpaceとソニー・ミュージックアーティスツが共催したオーディション「プリプロ」のファイナリストに選ばれ、のちにデビュー。現在までに2枚のミニアルバム、2枚のフルアルバムと1枚のライブアルバムをリリースする。

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『3(サン)』
今年満を持して発売となった3rdアルバム。切ないメロディと、Vo秋葉の渋い声が染みわたる曲「Hallelujah」など、正統派のロックサウンドを貫き通した楽曲が満載。どちらかというと、通勤路の帰り道などで聞きたい。編集担当はGoingSteadyを思い出しました。
発売/ソニー・ミュージック 価格/2431円(税込)発売中

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