サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 映画俳優を排出した【劇団12選】

――映画業界に著名俳優を輩出した特筆すべき劇団を、新劇の昔から現在まで約70年の歴史順に12劇団をピックアップ!

[新劇系]

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【1】文学座
1937年に岸田國士ら3人の劇作家、演出家により創設された老舗中の老舗。『七人の侍』(54年)の宮口精二、『犬神家の一族』(76年)の加藤武、『仁義なき戦い』(73年~)の金子信雄ら多くの著名俳優を生んだ。樹木希林、松田優作、桃井かおりらもここの研修生であり、最近では鈴木砂羽、長谷川博己なども輩出。映画界で広く活躍した山崎努も出身者のひとり。性格俳優として、黒澤明の『天国と地獄』(63年)や伊丹十三監督作など映画史に残る作品から『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)、『SPACE BATTLESHIPヤマト』(10年)など映画史にほとんど残らない作品まで幅広く出演。

●出身俳優
クロサワからセカチューまでなんでもあり!
山崎 努

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[出演作品]
『天国と地獄』

監督:黒澤明/出演:三船敏郎ほか/発売:東宝
ある男(三船敏郎)の元に、「息子を誘拐した」との電話が。だが、実際に誘拐されたは別の子供だった。間違いに気づいた犯人だが、男に意外な要求をする……。この作品で犯人が指示した身代金受け渡し方法は、実在の犯罪者にたびたび模倣されている。(63年公開)


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【2】俳優座
旗揚げは1944年。過去には『七人の侍』の稲葉義男、木村功、『若大将』シリーズ(61年~)の田中邦衛、『竜馬暗殺』(74年)の原田芳雄などが籍を置いた。また、その俳優養成所からは多くの著名俳優が巣立っている。最大の出世頭は映画、舞台、テレビで活躍を続ける大物・仲代達矢だろう。映画では特定の映画会社に属さず、黒澤明、小林正樹、岡本喜八、市川崑、成瀬巳喜男ら巨匠たちの作品に主役クラスで出演した。また自ら俳優養成所「無名塾」を創立。その指導は非常に厳しいことで知られ、遠藤憲一は10日で逃げ出し、真木よう子は仲代とのトラブルで退塾したといわれる。

●出身俳優
真木よう子を追い出した男
仲代達矢

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[出演作品]
『七人の侍』

監督:黒澤明/出演:三船敏郎ほか/発売:東宝
世界の映画史に残る大傑作。盗賊化した野武士の略奪により困窮した農民たちは、侍を雇って防戦しようとする。集まった七人の浪人たちは、豪雨の中、命がけで野武士達との戦いに挑むのだった。『荒野の七人』ほか、リメイク作が多数存在する。(54年公開)


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【3】劇団民藝
1950年に宇野重吉、滝沢修、北林谷栄らが創立。現在の代表は奈良岡朋子。五社協定で俳優不足に陥った日活との提携関係を結んだことで知られ、日活作品には、宇野、滝沢のほかにも芦田伸介、大滝秀治らが出演。宇野は「芝居でメシの食える劇団」を標榜し、スター女優を客演させるなど大胆な戦略で劇団を運営、俳優としては『西鶴一代女』(52年)、『秋津温泉』(62年)などの名作に出演した。『黒部の太陽』(68年)製作時に、五社協定に苦しむ石原裕次郎のために一肌脱いだことで、裕次郎は宇野を恩人として生涯敬った。宇野の長男、寺尾聰が石原プロに在籍したのもその縁だ。

●出身俳優
五社協定に苦しむ裕次郎を助力
宇野重吉

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[出演作品]
『黒部の太陽』

監督:熊井啓/出演:三船敏郎ほか/発売:ポニーキャニオン
当時、世紀の難工事といわれた黒部ダム建設、その関係者のドラマである。三船プロ・石原プロの共同製作作品。完成まで難航するも、大ヒットを記録する。「スクリーンで観て欲しい」との裕次郎の思いが尊重され、長い間ソフト化されなかった。(68年公開)



[70年代]

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【4】状況劇場
唐十郎が1963年に設立。当初は「シチュエーションの会」という名称だった。唐は資金不足解消のため、李礼仙(当時)と各地のキャバレーをめぐり、「金粉ショー」を披露していたといわれる。さまざまなゲリラ的手法の公演を行い、トラブルに発展しつつも注目を浴びていく。麿赤児、根津甚八、小林薫、佐野史郎、六平直政、渡辺いっけいらを輩出。映画俳優として売れっ子の佐野史郎は、テレビドラマで全国的知名度を得るが、アングラシーン出身者だけあり、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07年)などマニアックな低予算映画にも出演。そうした作品出演時は水を得た魚のようだ。

●出身俳優
唐十郎と一緒に金粉ショー!?
佐野史郎

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[出演作品]
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

監督:若松孝二/出演:坂井真紀、ARATAほか/発売:CCRE
若松監督の集大成的作品。連合赤軍の誕生の過程から、一連の事件の流れを克明に描いている。低予算であり、若松監督はカンパを集めたり、自宅を抵当に入れるなどして、製作費を捻出した。佐野史郎は旧世代の左翼活動家の役で出演。(07年公開)


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【5】劇団つかこうへい事務所
1974年につかこうへいが設立。稽古の過程でセリフを変えていく「口立て」という演出方法は、演劇界に革命をもたらした。この劇団出身者で、映画界での成功者に風間杜夫がいる。風間はもともと日活ロマンポルノに出演するなどしていたが、つかとの出会いにより舞台俳優として開眼する。映画での出世作は『蒲田行進曲』(82年)。風間が演じた銀ちゃん役は当初、松田優作にオファーされたもので、土壇場になって無名だった風間の抜擢が決まった。その後、テレビの『スチュワーデス物語』で人気がさらに上昇。映画ではつか脚本の『映画版・熱海殺人事件』(86年)などに出演した。

●出身俳優
もともとはロマンポルノの俳優
風間杜夫

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[出演作品]
『蒲田行進曲』

監督:深作欣二/出演:松坂慶子ほか/発売:松竹ホームビデオ
松竹と角川春樹事務所が共同製作した大ヒット作。舞台で人気を集めた戯曲をつかこうへい自身が映画向けに脚色。松竹の撮影所が舞台の作品だが、なぜか東映出身の深作欣二により、東映の撮影所で撮影されたことで、松竹内では反発もあったとか。(82年公開)


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【6】オンシアター自由劇場
串田和美、佐藤信、斎藤憐、吉田日出子らが「劇団自由劇場」の名称で1966年に結成。地井武男も創設メンバーのひとりだ。後に串田はシアターコクーンの芸術監督に就任。その線で、同劇場と劇団がフランチャイズ契約を結んだ。多数の映画に出演する余貴美子、『踊る大捜査線』の副署長役の斉藤暁もここの出身。柄本明も籍を置いていたが、串田と肌が合わずに退団している。現在、映画、テレビに引っ張りだこの小日向文世は19年間在籍。映像作品では端役が多かったが、00年代に人気がブレイク。映画では『アウトレイジ』(10年)、『清須会議』(13年)など話題作に続々出演中だ。

●出身俳優
頭が薄くなってからブレイク
小日向文世

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[出演作品]
『アウトレイジ』

監督:北野武/出演:ビートたけしほか/発売:バンダイビジュアル
キャッチコピーは「全員悪人」。血で血を洗う暴力団の抗争劇を描いた、北野武の15本目の監督作品だ。全編、過激なバイオレンスシーンが多く、映倫でR15+指定を受けてしまうことに。続編的作品『アウトレイジ ビヨンド』も12年に公開されている。(10年公開)



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