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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第76回

FBIが詐欺師と組んで汚職政治家らを逮捕!“司法の暴走”が喜劇に

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雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。

『アメリカン・ハッスル』

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1979年に起こった実話である「アブスキャム事件」を題材にしたコメディ。FBIと詐欺師がタッグを組んで大規模な囮捜査を実施。その結果、大物議員が大量に摘発されることとなった。しかし、その捜査方法に世論やほかの議員から批判が噴出。その顛末を面白おかしく映画化している。

監督/デヴィッド・O・ラッセル 出演/クリスチャン・ベイル、ブラッドリー・クーパー、エイミー・アダムスほか 日本での公開は、1月31日(金)より全国ロードショー


「ハッスル」という言葉は日本では「がんばる」の意味で使われているが、「無理やりに何かをする」というニュアンスもあって、そこから「売春や詐欺、博打などで儲ける」というスラングにもなった。『アメリカン・ハッスル』は、1970年代にひとりの詐欺師がアメリカの政治を揺るがせた「アブスキャム事件」を基にしたフィクションだ。

 77年、住宅ローン詐欺でFBIに逮捕されたメルヴィン・ワインバーグ(当時53歳)は、罪を免れるため、ある囮捜査を提案した。アラブの大富豪が経営するアブドゥール・エンタープライズという架空の投資会社をデッチ上げ、政治家に賄賂を受け取らせる。アブドゥールのスキャム(詐欺)でアブスキャムというわけだ。

『アメリカン・ハッスル』でワインバーグを演じるのはクリスチャン・ベイル。役名は変更されたが、1:9分けでハゲを隠した頭とビールっ腹、それに葉巻好きはワインバーグそっくりだ。ビールっ腹は特殊メイクではなく、クリスチャン・ベイルの自腹。ハゲもヅラではなく、実際に毛を剃って熱演した。

 ワインバーグのアブスキャム作戦に、FBI捜査官たちは乗ってしまった。78年12月、ニュージャージー州カムデン市長アンジェロ・エリチェッティが最初のターゲットになった。エリチェッティは、カジノを開く認可を得るために有力者に贈る賄賂をアブドゥール・エンタープライズから援助してもらおうとした。『アメリカン・ハッスル』で市長を演じるジェレミー・レナーの不思議な髪型はエリチェッティのそれを真似している。

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