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連載
サイゾー×プラネッツ『月刊カルチャー時評』VOL.21

『パズル&ドラゴンズ』──『パズドラ』ヒットに見るゼロ年代以降のゲーム史

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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×稲葉ほたて[ネットライター]

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ダンジョンでバトル中の画面(左)と、モンスターを入手(「ドロップ」)したときの画面(右)。ちなみに右側のキャラは、『HUNTER×HUNTER』とのコラボ。

 2013年のヒットコンテンツとなったアプリゲーム『パズドラ』。GREEやDeNAというソーシャルゲーム2強とは異なる、ガンホーが繰り出したこのゲームからは、ゼロ年代以降のゲーム史の流れが透けて見える──。

宇野 僕が『パズル&ドラゴンズ』をやったのは実質1カ月くらいなんだけど、やっている時期は結構ハマったんだよね。自分の周囲でもやっている同年代が多かった。

 パズドラで一番意外だったのは、ゲーム自体がソーシャルではなかったことなんだよね。使っている人間もソーシャル性を求めてというより、むしろリアルの人間関係まで含めた「ソーシャル疲れ」みたいな状態の人が、黙々と遊んでいた印象がある。

稲葉 僕も基本的には、サラリーマン時代に、会社帰りの電車で何も考えずに楽しめる娯楽としてやってましたね。ネットでゲリラダンジョンの時間割【1】が公開されてたので、間に合うように退社を早めたりして(笑)。

 パズドラに限ったことではないですが、ソーシャルゲームはガラケービジネスの隙間時間を奪い合う文化の中で、発展してきたものです。基本は暇つぶしなので、ソーシャル性なんて本質的には要らないんですよね。「ひとりでできる暇つぶしこそ最強」ですよ。

宇野 少し大きい話をすると、いまはコンテンツが2極化していて、1年に一度のAKB48総選挙とか4年に一度のワールドカップ、数年に一回の宮崎駿の大作みたいな祝祭的な大花火か、リアルタイムで小刻みに更新されていくものという2つになってる。人間が生理的なところで求めている娯楽はこの二通りでしかないということが、社会の情報化によって明らかになってきた。そのうちのひとつの究極の流れがソーシャルゲームなんじゃないかと思う。

 ソーシャルゲームについて語るときって結局、お金の問題の文脈でしか見られていない。でも僕はソーシャルゲームのようなものが流行ってるっていうのは、「ゲームとは何か」「遊びとは何か」という問いを突きつけてる気がする。

 2010年頃に「PLANETS」VOL.7【2】で話したことなんだけど、「結局、ゲームはネットに負けた」と。人間にとって一番面白いゲームとは、LINEみたいに知り合いとダラダラ話したり、ツイッターみたいに不特定多数と戯れることなのではないか。予定調和の安心感としても乱数供給源としても、そちらのほうが優れている。そうして、せいぜいバグと戯れるのが限界だったゲームから訴求力が決定的に落ちた。その後にそこで勝ったのも、『ポケットモンスター』や『モンスターハンター』のような、社会のネットワーク性を逆手に取って、自分たちの作りたいゲームに活かしたアクロバティックな作品だけだった。その流れがケータイ機に移っていったというのが、近年のゲームの歴史だと思う。

 この流れにソーシャルゲームもあるんだけど、もともとこの手のゲームって、プラットフォームに人を置いておくために始まった経緯があるじゃない?【3】 ゲームのためにネットワーク環境を利用する、つまりコンテンツのためにコミュニケーションを利用するのではなくて、むしろコミュニティを維持するため、コミュニケーションのためにゲームを利用するというふうに逆転していた。

 そういう時期が何年かあった後で、『パズドラ』みたいなソーシャル性の弱いものが出てきた。その背景には、以前ほどSNSが単純な暇つぶしの娯楽じゃなくなってきてることがあると思う。不特定多数のネットワーク上のコミュニケーションは面白いけど、実はこれって結構アクティブな行為なんだよ。人間はスイッチがオフに近い状態だと「見知らぬ相手との出会い」なんでウザくて、頭を使わずにひとりでできるシンプルなゲームのほうがいいと思う。

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