サイゾーpremium  > 特集  > タブー  > 落ちぶれタレントの墓場化した【演劇界】

――最近テレビで見かけなくなったな、と思う役者が、気づくと舞台俳優に転じていることが時々ある。役者の活動の一環でありながら、どうにもパッとしない印象の拭えないこの事態は、演劇界・芸能界にとってどんなうまみがあるのだろうか? ハイカルチャーの一ジャンルである演劇の、芸能界との分かち難い結びつきという薄闇を探る――。

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元夫ともども覚醒剤使用の発覚、その後の逃亡劇、逮捕と有罪判決、離婚と芸能界引退宣言、さらには6度に渡る実弟の逮捕と、もはや酒井法子の半生のほうがなまじな演劇よりもドラマティックなのではなかろうか。いずれ自伝の舞台化を本人主演で、となれば、クスリをキメていた頃の再現観たさに客が集まりそうな気もする。(絵/藤本康生)

 今年7月、土屋アンナの初主演舞台が中止になるというトラブルが報じられた。事の次第は、『誓い~奇跡のシンガー~』なる舞台において、原作者である女性歌手の意向が無視されているとして主演予定の土屋が稽古をボイコット。しかし製作サイドは原作者の許諾を得ていると主張し、両者の意見は真っ向から対立した。原作者の女性もブログで土屋を擁護するなど泥仕合と化し、最終的に8月上旬、舞台制作会社が土屋の所属事務所を提訴している。ときを同じくして、とんねるず・石橋貴明の長女で女優の穂のかが自身の主演舞台を降板。こちらは体調不良が原因とされているが、やはり上演は中止となった。

 こうした芸能ニュースは耳目を引いたが、まず何よりも、土屋アンナや穂のかが舞台に出演していること自体、多少の意外性を持って受け止められていた。どちらも女優として活動しながら最近はテレビや映画で目にする機会も減り、「あの人は今」とまでは言わないものの、「まだ本格的に役者やってたんだ」「いつの間に舞台女優に?」という感想を抱いた人は少なくないだろう。

 あるいは、09年に覚醒剤取締法違反で逮捕され、有罪判決を受けた酒井法子の本格的な芸能活動復帰も舞台公演だった。12年12月から時代劇『碧空の狂詩曲~お市の方外伝~』に出演。一度は芸能界からの引退を明言したが、本作をきっかけに女優としての活動を再開させるとされ、週刊誌等を騒がせた。

「散々話題は呼びましたが、びっくりするくらい客が入らなかった。毎公演、客席が半分も埋まっていなかったそうです。メインの出演者を除いて、キャストもスタッフもチケットノルマが課せられており、手売りで捌いたそうですが、S席8500円、A席7500円という強気な価格設定もあって、自腹を切る羽目になった人もいた。内容も演技のレベルもひどいものだったようで、観に行った知人は『金返してほしい』と憤慨してましたよ(笑)。酒井法子さんの復帰という話題性と、彼女の古くからのファンを当て込んだのでしょうが、舞台の質もさることながら、やっぱりれっきとした犯罪となるとあまりにダーティすぎて、さすがにファンが戻ってこないんでしょう。あれだけ大々的に話題になっての大コケなので、おそらく今後酒井さんを舞台に起用したいと考える演劇関係者はいないはず。集客できなければ、なんの価値もないですからね」(舞台プロデューサー)

 この件では体のいいみそぎの場として使われた感もある演劇というフィールドだが、「使いどころのない役者やタレント、アイドルを、とりあえず演劇の舞台に出すのは芸能界ではよくあることです。仕事のない間、遊ばせておいても仕方ない、という考えのようです」と言うのは演劇関係者だ。

「ホリプロの『ピーターパン』が有名ですが、ケイダッシュやアップフロントエージェンシーなど、自社タレントを中心にした主催公演を打つ事務所は多いです。毎回大入り満員とはいかなくとも、赤字にならない程度には人を集められるから、どこも舞台にできるコンテンツを常に探している状態。

 さらに、80年代以降の小劇場ブームで劇作家や演出家として活動を始めたはいいけれど、その後食えなくなってテレビやラジオの構成作家になった人が多いんです。そこで多少売れた人は、また演劇をやろうとして劇団を作り、テレビの仕事で培ったつながりを利用して、それなりに華やかな公演を打つようになる。そうして、別に演技はうまくないけど、そこそこ名前は知られているから集客はできるタレントや役者が出る舞台が増えるわけです。一部の演劇がそうした人たちの吹き溜まりになっているというのは、あまり褒められたことではないのですが……」(前出・演劇関係者)

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